國村隼から「すごく苦しそうなんだ、君は」

 ずっと求め続けてきた女優の仕事ができるようになった。しかし、松岡には余裕が一切なかった。それを見抜いていたのが、映画『ちはやふる』(2016年)で共演したベテラン俳優・國村隼だった。

 國村からは芝居を褒められたが、「カメラが止まるとすごく苦しそうなんだ、君は」と指摘された。「自分の人生これだけって思ってない?」「もっと自由なんだよ、今辞めたって幾らでも未来はあるんだよ」とも言われたという(フジテレビ系『ボクらの時代』2019年4月20日放送)。

映画『勝手にふるえてろ』(2017年)PR時の松岡茉優 ©文藝春秋

 子役時代から芸能界にいた松岡には、俳優を辞めれば、それまでの人生まで失敗になるような思いがあり、いつの間にか窮屈な場所に自分を追い込んでいた。國村から「辞めてもいい」と言われて、女優の仕事を辞めるか辞めないか、真剣に考えたという。

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 俳優を辞めても、辞めなくても、他に道があることに気づいた松岡は「超生きやすい」「息がしやすい」と実感するようになる。

「生きづらさ」を表現

 映画初主演作は『勝手にふるえてろ』(2017年)。恋愛経験が乏しく、妄想と現実を行き来する不器用な女性・ヨシカを演じた。

映画『勝手にふるえてろ』(2017年)

 感情を爆発させる場面も多いが、松岡はその奥にある孤独や傷つきやすさまで表現してみせている。作品とともに松岡の演技も高く評価され、主演女優としての存在感を決定的なものにした。松岡は本作についてこう語る。

「『自分とまわりの間に何か生きづらさを一度でも感じたことのある子たちに届きますように』と思っています」(シネマトゥデイ 2017年12月25日)

 松岡の役作りは徹底している。彼女はこう言い切る。