配信直後から話題のドラマ『ダウンタイム』(Netflix)で仲里依紗とともに主演を務める、松岡茉優(31)。その演技力が一際注目を集めたのが、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得した映画『万引き家族』への出演だろう。だがこの撮影は、実力派若手俳優として知られるようになっていた彼女をもってしても、一筋縄ではいかなかったという。(全3回の3回目)

松岡茉優(2025年5月、「クランチロール・アニメアワード2025」のカーペットイベント) ©時事通信社

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 松岡茉優は2018年、是枝裕和監督の映画『万引き家族』に出演した。松岡が演じた柴田亜紀は、主人公(安藤サクラ)の妹として一緒に暮らす女性。一見、何を考えているか読み取りづらい人物だが、「JK見学クラブ」なる風俗店でバイトをし、次第に一人の客と心を通わせていく。

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 当初のプロットに書かれていた亜紀は「とりえのない太った女の子」であり、松岡とはかなり異なる人物だった。是枝作品への出演を熱望していた松岡だったが、監督との面接で「これ、私じゃないですよね」と言い残して帰宅している。

是枝監督から「各世代で一番うまい役者を集めた」

 ところが約2週間後、出演の連絡が来た。是枝監督が松岡に合わせてキャラクターを書き換えたのだ。安藤、樹木希林、松岡について、是枝は「各世代で一番うまい役者を集めた」と語っている(anemo 2018年6月4日)。

 

2018年5月、映画『万引き家族』はカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを獲得した。(左から)松岡茉優、佐々木みゆ、安藤サクラ、リリー・フランキー、城桧吏、樹木希林、是枝裕和監督 ©EPA=時事

まったくOKが出なかった

 ところが『万引き家族』では、これまで培った役作りが通用しなかった。松岡の演技に、まったくOKが出なかったのだ。これまでやってきたことを全部捨てて演じたら、やっとOKが出た。彼女にとって初めての経験だった。

 これまで松岡は演じる前の準備として、演じる役の生年月日、血液型、星座、生まれ年、家族構成などを考え、“履歴書”に書き出していた。しかし、『万引き家族』では履歴書を破り捨てて現場に臨んだ。監督が毎日のように現場で言う、新しいことに対応するためである。

 とはいえ、それが苦痛だったわけではない。是枝作品の熱烈なファンだった松岡にとっては、「あぁ、こんなふうに撮っていたんだ!」と納得する現場だったのだそうだ(リアルサウンド映画部 2018年6月8日)。