樹木希林からの忘れられない言葉

 樹木希林からは、忘れられない言葉をもらった。子役時代からオーディションに落ち続けた話をすると、樹木は「あなたはね、決め手がないのよ」と言ったという(Yahoo!ニュース 2019年10月1日)。さらに「顔に特徴がない」と毎日のように言われていた。

デビュー20周年を記念した書籍『ほんまつ』。収録のエッセイではオーディションに何度も落ち、仕事がない時期が続いた過去などを明かしている(扶桑社、2023年)

 松岡は自分でも、自分のルックスをそのように考えている節がある。2016年に第8回TAMA映画賞で最優秀新進女優賞を受賞した折には、『ちはやふる』の共演者である広瀬すずや同じく受賞した小松菜奈と比較して「華があるタイプではない」とコメントしていた。

 フォトエッセイ『ほんまつ』(扶桑社 2023年)には、「今の私が自己紹介するとしたら」と前置きして、次のように記している。

ADVERTISEMENT

「初恋の人に似ていると言われたことが一度ではありません。それって、わりと普通だということだと思うのです。もっと華やかな顔だったらとか、もっとスタイルが良かったからとか、芸能界の素敵な人たちと比べて人並みに落ち込んできたけれど、私の持ち味は、幅の広い役を演じられることだと今は思っています」

 松岡が演じる役柄は幅広い。「決め手がない」は、何者にでもなれるということである。

2016年撮影 ©文藝春秋

「生活者」の女優でありたい

 樹木希林と安藤サクラからは、もう一つ大きな影響を受けている。

 それまで松岡が抱いていた「女優」のイメージは、きれいで、素敵な生活を送り、多くの人に愛される華やかな存在だった。しかし、樹木や安藤は、スーパーの特売を気にかけ、正月の残りのおせちをタッパーに入れて現場へ持ってきたりするなど、いつも日常を感じさせる振る舞いをしていた。松岡は彼女たちを「生活者」という言葉で表現し、自分もそうありたいと強く思うようになる。