――伊織殿さんはそれまでメイクをしたことはあったのですか?
伊織殿 いえ、ファンデーションすら買ったことがなかったです。もともと「男がメイクなんかするものではない」という古い考え方の家に育ったので、最初はかなり抵抗がありました。
――オーディションで受かった理由は聞いたことがありますか?
伊織殿 やっくんは、僕のどこを見てくれたのかはわかりませんが、「何か光るものを感じた」というようなことを言っていた気がします。
オーディションが進む中で、ギターのメンバーは先にほぼ決まっていたので、「お前はベースをやれ」と言われました。それで次の日ぐらいにベースを買いに行ったんです。もしかしたら、言われてすぐに動いたところを、「やる気があるな」と思ってくれたのかもしれないですね。
テレビで見たままの姉御肌で、お説教が長いやっくん
――一緒に活動してみて、やっくんにはどんな印象を持ちましたか。
伊織殿 テレビで見るやっくんと、普段のやっくんはあまり変わらなかったんです。面倒見のいい姉御肌のままでした。
楽屋では「メイク道具で足りないものはないか」と気にかけてくれて、僕が「チークを貸してもらっていいですか」と聞くと、「勝手に使っていいよ」って。やっくんにできることは、だいたいしてくれました。
ただ、お酒を飲むと長い長いお説教が始まるんですよ。ライブの打ち上げでは、「お前はここがダメだ」「もっとこうしろ」って、僕ともう一人のメンバーがよく怒られていました。
説教された後には、もう一人のメンバーと「腹立つなあ」と話したこともあります。でも、今振り返るといろいろ指摘してもらえたことはありがたかったですね。
――伊織殿さんは、何を指摘されることが多かったのでしょう。
伊織殿 「トーク力をもっと磨け」「お前は下手くそすぎる」と、よく言われました。ベースも練習しろと言われましたけど、どちらかというとトークについての指摘が多かったです。
僕は「わかりました、頑張ります」と答えていました。でも心の中では、「急に言われても、できるわけないやん!」と思っていました(笑)。ベースも女装もテレビの仕事もなにもかもが初めてで、ついていくだけで精いっぱいだったんです。
僕は劣等感の塊でした。やっくんも、ほかのメンバーも輝いて見えたんですよ。自分は何もできないから、とにかく迷惑をかけないように食らいつこうとしていました。
――伊織殿さんたちがまだステージに慣れていなかった頃、やっくんはどんなふうにメンバーを支えてくれましたか。
伊織殿 僕らは良くも悪くも、まだ素人っぽさが抜けていなかったんです。誰かがトークで噛んだら、やっくんがすかさず突っ込んで、お客さんを笑わせてくれる。僕のこともうまくいじって、場を盛り上げてくれました。
頭の回転が速かったですね。『エンタの神様』でずっとアドリブをやってきた人は違うな、と思いました。

