クラウン、セドリック…なぜ「セダン」がタクシーのスタンダードになったのか?
タクシーの車両には長い間、セダンが使われてきた。それは乗客と荷物を乗せ、長距離を快適に走れるクルマがセダンしかなかったからだ。またタクシーは走行時間が長いため、燃料に安価なLPG(液化石油ガス)を用いており、大きな燃料タンクを必要としたという理由もある。
前述のように、国産車のタクシー車両はトヨダAA型が嚆矢となったが、本格的な導入は国内メーカーの大量生産体制が整うまで待たねばならなかった。そこで大きな意味合いを持つのが、1955年に登場したトヨペット・クラウンである。クラウンは純国産車として初めてのセダンであり、タクシー業界にとっても待望のクルマであった。
実はトヨタは当初クラウンのタクシー需要を考えておらず、富裕層や法人向けとして開発していた。しかし、いざ発売してみると思ったほど販売が伸びず、タクシー業界からの要望を受けて装備を簡素化した“スタンダード仕様”が生まれている。クラウンはモデルチェンジのたびにクルマとしての完成度を高め、タクシー採用率も高まっていった。
同じように日産自動車はセドリック/グロリアを高級セダンとして用意するだけでなく実用的なグレードも設定して、タクシー需要をカバーしていったのである。
なぜ「カローラ」ではなく「クラウン」だったのか
どうしてクラウンとセドリック/グロリアがタクシー車両として使われるようになったのか。それには大きく分けて2つの理由が考えられる。
まずはクルマとしての耐久性だ。FRレイアウトでボディサイズも十分なセダンは、ボディだけでなくパワートレーンや足回りも丈夫な構造にすることができる。
しかもエンジンと変速機、デファレンシャルギア(駆動輪左右の回転差を吸収する装置)などが独立して配置されているため、構造に無理がなく、振動や衝撃にも強い。
部品レベルで耐久性を確保できる上に、エンジン、変速機、デフのどれかが消耗しても、そこだけを交換することで走行機能を維持できる。当時はエンジンや変速機などをリビルド品(分解整備済みの中古品)に載せ替えて50万km以上走るのがタクシー車両の常識だった。
ならばその後登場するカローラやサニー(かつて存在した日産のコンパクトセダン、カローラのライバル)といった大衆FRセダンでも代わりが利くのではないか、と思われる向きもあるかもしれない。
しかしカローラなどの大衆車は、そこまでの耐久性は考えられていないから、ボディや足回りの鋼材も薄く細くして、軽量で安価に仕上げられている。とてもタクシーとして超長距離を走り続けるには不向きだったのだ。
