Me Too運動が実現した「時効をこえる訴訟」

 トランプの抗弁を受け、キャロルはその年の11月にトランプに対する名誉毀損訴訟を起こしている。当時、ニューヨーク州では成人に対する性的暴行は5年が時効だったため、キャロルは性的暴行によってトランプを訴えることはできなかった。

 しかし3年後、トランプが大統領1期目の任期を満了した翌年の2022年に、キャロルは性的暴行と名誉毀損を理由にトランプに対して2度目の訴訟を起こした。その背景には当時、社会現象となった「Me Too」ムーヴメントがある。

 2017年、ハリウッドの大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによる女優やモデル、映画業界で働く女性などへの性的暴行が次々と明るみに出て、大きなスキャンダルとなった。

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 この時、女優・歌手であり、社会活動家でもあるアリッサ・ミラノが性的暴行の被害者は声を上げようとSNSで呼びかけ、ハッシュタグ「#MeToo」を使うことを提案(ちなみに、Me Tooというフレーズは、自身も性的暴行の被害者で市民活動家でもあるタラナ・バークによって2006年に初めて使われたものだ)。

 これが大きな反響を巻き起こし、ワインスタインだけでなく、5章のビル・クリントン&ヒラリー・クリントンの節で登場した俳優のケヴィン・スペイシーなど、他の著名男性たちも告発された。

 こうした社会の動きを受け、ニューヨーク州は2019年に性的暴行の時効を5年から、悪質性や年齢などに対応した法的区分にあわせて、時効廃止、20年、10年へと変更した。

 ただし、当初は過去の事件には適用されなかったため、ニューヨーク州は被害者への救済策として、2022年11月~2023年11月の1年間に限り、時効が成立している過去の事件も提訴できる「成人サバイバー法」を制定したのである。キャロルはこれを使って2度目の訴訟に踏み切ったのだった。

 この裁判ではピープル誌の元記者、ナターシャ・ストイノフも証言台に立った。ストイノフは2005年にトランプとメラニアの結婚1周年の記事を書くための取材としてマールアラーゴを訪れた際、トランプに突然キスをされたと告発していた。