「恋多き女」と形容される芸能人はほかにもいるが、加賀まりこの場合はその事実を隠さないところが清々しくさえ感じられる。いつの時代も世間の目は陰に陽にあるものだろうが、自分の生きかたに強い信念を持っているのがうかがえる。

そんなキャラクターは、古舘伊知郎とともに司会を務めた音楽番組『夜のヒットスタジオSUPER』(フジテレビ系、1989年放送開始)など、女優以外のタレント業にも生かされている。また趣味の麻雀にもプラスの効果があるのか、麻雀番組『THEわれめDEポン』(フジテレビ系、1995年放送開始)で何度も優勝している芸能界きっての雀士でもある。

名作『麻雀放浪記』を書いた作家・阿佐田哲也とも交友があった。阿佐田は加賀まりこについて、「彼女ほど生き方を飾らない女優さんは珍しい」と感嘆する。「女優という職業の中で、正直に生きるのはとても至難なこと」だが、加賀は「本物の正直」であると(阿佐田哲也『怪しい交遊録』)。

ADVERTISEMENT

『ブラッサム』の第1週完成披露試写会に出席した加賀まりこは、今回のドラマを「中途半端に綺麗事にしないことだけを、心から祈ってます」と制作陣にわざわざ要望していた。それは、宇野千代の人生がそうだったからであると同時に、加賀自身もまた「本物の正直」を貫いて生きてきたからに違いない。

太田 省一(おおた・しょういち)
社会学者
1960年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本、お笑い、アイドルなど、メディアと社会・文化の関係をテーマに執筆活動を展開。著書に『社会は笑う』『ニッポン男性アイドル史』(以上、青弓社ライブラリー)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩選書)、『SMAPと平成ニッポン』(光文社新書)、『芸人最強社会ニッポン』(朝日新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『すべてはタモリ、たけし、さんまから始まった』(ちくま新書)、『21世紀 テレ東番組 ベスト100』(星海社新書)などがある。
次のページ 写真ページはこちら