「直前までケガをしていたので、ここで無理をさせる必要はないから、と練習させていなかったんです。その分、先輩たちが頑張って、チームをつくってきたんですけど、大会前日に『やっぱり行けそうです』と。僕からすれば、いやいや頑張ってきた選手がいるんだから、と思うんですけど、周りの選手も『石川が行けるならそれで行きましょう』と不満も出ない。しかも最後は石川が自分でちゃんと決める。アジア選手権もまさにそうですよね。デュースで競り合った2セット目の最後のサービスエースや、勝負を決めた最後のスパイクを石川が決める。そこで『お前、何だよ』ではなく、『やっぱり石川だよな』と思わせる不思議な魅力がある。周りを引き上げるけれど、同時に周りも彼を引き上げてくれる。石川は、その両面を持っているキャプテン、リーダーなのかもしれませんね」
若い世代の「常識」が変わった
かつて石川も選出されたU18日本代表の監督も務める竹内は、海外での試合の時にも「他国の指導者から『日本はどんな指導をしてこれだけ強くなったんだ』と聞かれることが増えた」と嬉しそうに話す。
勝ち負けよりも、将来の日本代表を担う選手を送り出す立場ながら、7月のアジア選手権で準優勝し、来年の世界選手権出場権を得た。顔ぶれもユニークで、超進学校の開成高に通う203センチのミドルブロッカー名取遼や、194センチのセッター、マサジェディ阿蘭など、リベロを除いた13名のうち190センチ以上の選手は9名。「技術や経験はまだまだ」と言いながらも、今から世界で同世代の選手と戦う経験は大きい。竹内はこれからを担う選手たちに、10年近い時間をかけて成熟してきた今の日本代表を重ねる。
「ミドルには2メートル近い同世代の選手が3、4人いる。まさに今の小野寺や山内(晶大)、(髙橋)健太郎と同じです。小野寺たちが高校時代から切磋琢磨し合って絆を深めてきたように、今U18にいる選手たちも日本国内ではライバルでありながら、共に世界と渡り合う。10年後には今の日本代表と同じような関係性が築かれるかもしれません」
※約7300字の全文では、石川祐希に関する秘話がさらに語られています。全文は月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年11月号に掲載されています(田中夕子「石川祐希 日本バレーを変えた男」)。
■田中夕子(たなか・ゆうこ) 神奈川県生まれ。『月刊トレーニング・ジャーナル』編集部を経て2004年フリーに。五輪競技を中心に取材。著書に『日本男子バレー 勇者たちの軌跡』(文藝春秋)など

