万博・大屋根リングの現場を支え、「木造」の専門性を育てる

 14年に入社してから、高層ビルや物流倉庫などの建設現場で施工管理の経験を積んだ。

 学生時代に学んだ木造建築の工事を初めて担当したのは、日本初の11階建て高層純木造耐火ビルだった。社内に経験者は少なく、確定的な基準もなかったため、手探りでのスタートだった。

 既存の情報だけでは解けない問題が次々に出てくる。それでも「なぜ」「どうやって」をメンバー全員で考え、すり合わせることで解決の糸口が見え、現場が動き、建物が姿を現していく。石坂氏にとっては、モノづくりの楽しさを再確認する経験になった。

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 その後、本社勤務となり、第一線の現場からはいったん離れた。本社では一つの現場に専属的に所属することはないが、複数の現場に同時に関わることができる。石坂氏はここで全国の木造案件の技術支援に多く携わった。大阪・関西万博の大屋根リングの建設でも、木造ビルの知識と経験を生かして現場を支えた。本社勤務を通じて、石坂氏は「木造に強い」という自分の専門性を育てられた。

 それでも、思いが向かった先は現場だった。「職人さんと日々コミュニケーションを取る現場が、やっぱり一番面白い」。上司に何度も直訴し、26年3月末に今の都内の現場へ赴任した。

本社勤務から現場に戻って、年収1000万円へ

 現在手掛けるのは、最盛期には200人近くの職人が働く大規模な現場だ。石坂氏が担当する内装工事は工種が多く、40~50人規模の職人を見ていく場面も出てくる。職長に段取りを伝え、工種の違う職人同士の動きを調整する。自分の頭にあるイメージを相手が納得して動ける言葉に置き換えられるかが施工管理の鍵だ。

 工事係長となった今、仕事の中心は作業の詳細計画を立てることだ。若手の頃は工事の記録を取り、想定外の出来事に対応する業務が多かった。今はその一歩手前で、作業工程を考える時間が増えている。

 現地を見て、これから行う作業を具体的にイメージする。その上で、作業内容や工事の進め方を計画に落とし、職長や職人と確認する。いざ取りかかって計画と違う事態が起きれば、その都度相談する。現場と事務所を行き来しながら、工事を前に進めるのが工事係長の役割だ。

 石坂氏はこう語る。「人工知能(AI)に代わられる仕事もあるかもしれない。でも、施工管理の仕事の価値はむしろ高まるのではないか。現場の仕事を選ぶ人がもっと増えてほしい」。建設現場でもAIやロボットの活用は進むが、まだ限定的だ。現場を動かす職人の事情をくみ取り、納得を引き出す役割は人しかできないと考える。

 石坂氏の年収は、現場に再び出るようになって上がった。各種手当が厚くなるからだ。26年度の年収は1000万円を超える見通しで、福利厚生にも満足している。「夫と比べても私の方が恵まれているかもしれない」と笑う。