一人前と見られない悔しさも経験 

 職人と一緒に働ける日々は、学生時代から望んできたものだった。だが、憧れていた職人の近くに立てたからこそ、胸に引っかかるものもあった。

 今でこそ現場に女性監督がいるのは当たり前になりつつあり、石坂氏も性別を数ある特徴の一つと捉え、現場でストレスを感じていない。だが、入社当時はまだ珍しかった。顔と名前を覚えてもらいやすい一方、目立つ存在だからこその葛藤もあった。

「男性の若手社員には厳しい職人さんが、自分には少し甘い。一人前の現場監督として扱われていないように感じることがあった」と明かす。職人に憧れてこの世界に入ったからこそ、その甘さが悔しかった。

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 もう一つ悔しかったのが、自分と直接話そうとしない職人がいたこと。頼んだことに対して、何か物申したそうなときでも、自分には言わない。自分を飛ばして上司のところに後から相談に行くのだ。

「自分の言葉で説明すること」が職人との対等な関係を育んだ

 なぜかと悩んで気づいた。上司の言葉をそのまま職人に伝えるだけになっていなかったか。それでは相談する気になれなくて当然だ。自分の考えがないまま頼んでいるから、「上と話せばいい」と受け流される。

 職人から一人前の監督として見られるには、自分の言葉で説明する必要があった。そこで意識したのは、上司の指示を伝えるときであっても、その理由を自分の中でかみ砕くことだった。拙くても自分の言葉で説明すれば、反論も自分に返ってくる。それで職人が難色を示したなら、なぜ難しいのかを聞き、どうすればできるのかを考え、やはり自分の言葉で説明するようにした。

 専門知識も、現場で一つずつ身に付けていった。若手の監督は、一つの現場全体を見るのではなく、鉄骨、内装、外装といった工事の種類ごとに担当を持つことが多い。石坂氏は、その時々に担当した現場で、上司から指示された業務をこなすだけでなく、背景を理解するように努めた。品質上のルールや基準、なぜその手順が必要なのか、どう進めれば安全で確実なのかを常に意識した。

 職人に頼り切るのではなく、事前に社内外の情報を調べて準備する。実際の施工が始まれば、現場で職人に話を聞き、事前の準備では気付けなかった点を学ぶ。地道な積み重ねが、別の工事にも生きていった。

 

 その姿勢は、職人との関係を少しずつ変えていく。上司への確認を求められる場面は減り、対等な立場で相談を受けるようになった。今では、職人との関係がむしろ手応えに変わっている。「どう伝えれば職人さんが動いてくれるのかを考えて、うまくはまった時が楽しい」