「水をのみたい」痛みより辛かった“喉の渇き”

「オワリデース、ムラタサンオキテクダサーイ!」

 腕を揺さぶられて目を覚まし壁の時計を見ると、もう夜になっているではありませんか。サイトには手術は3時間で終わると書いてあったのに……。

 喉が渇いて死にそうでしたが、口は開きません。ホワイトボードを差し出され、筆談しかコミュニケーション手段がないことに気づきました。

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『のどがかわきました。おみずをのみたいです』

「アトロクジカンノメマセーン」

 昨日の夜から禁止されて何も口にしてなかったので、丸2日水を飲んでいないことになります。

 ひりひりと焼けつくような渇きに、砂漠で遭難した孤独なラクダの気持ちがわかりました。そのときは術後の痛みよりも水が飲めないことが辛かったです。

「エグッ、グェッ、グォッ」呼吸困難になってパニックに

 次の日はまだ眩暈がしてフラフラしたけど、ずっと座っていると腫れるからとにかく動くようにと言われました。言われるがままに点滴スタンドを転がしながら廊下に出ると、他の部屋の患者さんが何人も壁をつたって歩いていました。みんな私と同じように赤いチューブを何本も垂らしています。私にはそのチューブが未来と繋がる命の動脈に見えました。

 ガーゼ交換のとき顔を見るとめちゃくちゃ腫れてブスだったけど、超小さい顔になっていて感激しました。

 病院には2泊3日入院したのですが、とにかく辛かったのは痰が詰まること。

 たかが痰と嘲笑う事勿れ、絡んだ痰をゲホンと迂闊に出してしまったら、その瞬間切った顎の骨に負荷がかかりせっかくの手術が台無しになってしまうかもしれない。

 いちいち看護師さんを呼び出して痰を吸引する機械で吸ってもらうんです。赤ん坊よりも無力です。

 でもナースコールをしてもなかなか来てくれないんですよ、患者さんがたくさんいるから。

写真はイメージ ©AFLO

 一度呼吸困難になって喉が痙攣し、パニックを起こしてナースコールを押しまくりました。痰を詰まらせて死んだ人もいると通訳さんに聞いたからです。

 ちっとも危機感のない笑顔の看護師さんがゆっくりと歩いてきます。

「ダイジョーブデスカー?」

「エグッ、グェッ、グォッ」

 翻訳すると「大丈夫じゃないです、助けて早く吸え」です。

 隣の部屋の中国人はどんな手術をしたのか、一晩中絶叫していました。