ロシアが都市への攻撃に多用する代表的な無人機が、イランで開発された「シャヘド」だ。プロペラ式で、全長約3.5メートル、翼幅約2.5メートル。爆薬を積み、時速180キロで長距離を低空で飛ぶ。「ブーン」という不気味な羽音は、遠くからでも聞き分けられる。

イラン製無人機「シャヘド」 Ⓒ時事通信社

 無人機は前線の形を変え、市民を地上から追い払い、原発の上空にまで飛来した。そして今、戦場で培われた無人機の技術と実戦知は、日本海の対岸へ流入しつつある。

キルゾーンの内側

 ドブロピリャを訪れたのと同じ9月、ドネツク州に隣接するドニプロペトロウスク州ワシリキウカのガソリンスタンドから、無人機部隊の車に同乗した。塹壕へ向かう車内で、兵士が低い声で告げた。

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「ここからはスマートフォンの位置情報を切ってくれ」

 前線で最も恐れられているのがFPV(一人称視点)無人機だ。操縦士が機体前方のカメラ映像をゴーグルで見ながら遠隔操作し、標的に体当たりさせて爆発させる。小さな機体だが、移動する兵士や装甲車を狙い撃ちできる。

ゼレンスキー大統領 🄫時事通信社

 なかでも「有線型」は、機体からするする伸びる光ファイバーケーブルを通じて操縦する。無線通信に対する電波妨害の影響を受けにくく、迎撃が難しい。有線型の射程距離は搭載する光ファイバーの長さに依拠し、ロシア、ウクライナ双方が技術革新を重ね、その距離を延ばしてきた。現在は最大で50キロまで到達するようになった。

 有線型の射程に収まる一帯は、「キルゾーン(殺戮地帯)」と呼ばれている。我々が目指す塹壕はその縁に当たる区域で、ドネツク州境まで十数キロの地点にあった。

 現代の戦場は、土煙を上げて突進する戦車が制する時代ではない。小さな無人機に見つかれば砲撃が誘導され、逃げる兵士にもFPV機が迫る。地上で動くこと自体が、命懸けになった。

(年齢、肩書は取材当時)

※約7000文字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年11月号に掲載されています(飯沼賢一「無人機戦争―ウクライナ現場ルポ」)。
・日本も対岸の火事ではない
・平時に学べるか

■いいぬまけんいち 1983年、神奈川県生まれ。一橋大学卒。2007年、共同通信社入社。ウラジオストク支局、ロンドン支局などを経て、25年3月から26年4月までキーウ支局長

文藝春秋

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無人機戦争―ウクライナ現場ルポ

出典元

文藝春秋

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