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沖縄県知事選で問われた「進次郎効果」 幻の知事候補・安里繁信氏に訊く

小泉進次郎は変節したのか? 連続インタビュー #3

2018/10/12
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安室ちゃんのような若い政治家がいません

――那覇で行われた街頭演説会場のすぐそばに、安室奈美恵さんのコンサート会場に向かうシャトルバスの停留所がありました。街宣カーの上に乗った小泉さんはマイクでファンたちに声をかけるも、彼女たちは一瞬だけ携帯を翳して写真を撮ろうとするものの、その後は苦笑いしていました。今回の知事選を象徴するような絵面でした。

安里 それは、さすがの進次郎さんだって、安室ちゃんには勝てないでしょう。安室ちゃんの存在は、沖縄県民にとって、単なるアーティストやファッションリーダーではありません。特にボクら子育て世代にとっては、文句なしの「Hero」なんです。

©常井健一

 一昔前、沖縄に来る観光客のクレームで一番多かったのは「食事」でした。本土から来た人に沖縄そばを出せば、「どうして麺がのびているんだ?」と言われる。ミミガーを出せば、「こんなモノ食えるか!」と怒られた。ゴーヤちゃんぷるーは、東京発のバラエティー番組では罰ゲームに出てくる「まずい食べ物……」として扱われていました。

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 それが、安室ちゃんが登場して「ゴーヤが大好き」とテレビで言ったら、東京の女の子たちが競うように沖縄料理を探して食べるようになったんです。これまで全国から差別され、バカにされてきた沖縄が、彼女の活躍によって、全国の若者の「あこがれ」の的に変わった。どんなに全国各地で物産展を開いても、政治家の力や行政の政策を駆使しても克服できなかった県民の「沖縄コンプレックス」を、安室ちゃんはたったひとりで吹き飛ばしてくれたんですよ。

 ところが、沖縄の政治の世界には、安室ちゃんのように若者に「こんな大人になりたい!」と思わせられる若い政治家がいません。それはとても残念なことです。少なくとも沖縄自民党の中にはいない。だから、選挙となれば、本土から小泉進次郎さんを連れてくるしかないんですよ。

©常井健一

進次郎さんにも負けない、根強い人気がある

――しかし、いつまでも小泉さんひとりに頼らなければならないのでしょうか。

安里 実は、小渕優子さんも人気なんです。お父さんの故・小渕恵三元首相は、大学時代から沖縄に何度も足を運び、戦没者の遺骨収集や復帰運動にかかわった。政治家になってからも沖縄問題の解決を前面に掲げ、沖縄に通い続け、首相時代にはサミット開催も決めた。沖縄を理解して本気で動いてくれた恩人なんです。小渕優子さんはその娘ということで、昔を知る世代には進次郎さんにも負けない、根強い人気があります。

――安里さんは、小渕さんの沖縄後援会の幹部でもありますね。おふたりをそばで見られてきて、元首相の子女としての「違い」をどう感じていますか。

安里 優子さんはすでに当選7回ですが、あと20年はじっくり実績を重ねようと意識しながらロードマップを描いていますので、急ぐ選択肢は一切ありません。一方、進次郎さんは対照的で、まだ当選4回でも常に勝負を仕掛けるタイミングを見計らっている政治家ですよね。

 優子さんが調整型なら、進次郎さんは改革志向が強いリーダー。どちらがいつ政権を担うかは、時代が判断することになるでしょうね。

文藝春秋 2018年 11 月号 [雑誌]

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2018年10月10日 発売

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