こうした商品は「家庭用医療機器」ですが、睡眠に関するエビデンスは弱い。商品説明には皮膚を温めて血行を促進するとは書かれていますが、「睡眠が良くなる」とはどこにも明記されていない。

睡眠はまず「質」より「量」

 真山 でも、実際はたいへんに売れている。睡眠の「質」を求める人が高いお金を払って買っているわけですよね。

 ただ柳沢さんは、日本人の睡眠には、「質」以前にまず「量」が足りないと問題提起されていますね。

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真山仁氏は「このままだと15年後に死ぬ」と睡眠の専門医から宣告されたことがある ©文藝春秋

 柳沢 そうです。「自分は7時間寝ているのに疲れが取れない。じゅうぶん寝ているはずなのになぜだろう。睡眠の質に問題があるのか」と言う人がいる。けれど、7時間寝ればじゅうぶん、ということに根拠はありません。睡眠不足とは「その人にとって必要十分な睡眠を取らない生活習慣」ということ。ですから、その人に対しては、まず「あなたの睡眠は7時間じゃ足りていません」と伝えるのが正解なんです。

 日本人の8割以上が日常的に疲れを感じている、という全国調査がありますが、私に言わせれば、その大きな原因は睡眠不足。眠気として感じていなかったとしても、実際は睡眠不足の方がたくさんいるのです。

 真山 自分にとって適切な睡眠時間をどう見極めるか。その方法は本の中で紹介していますが、とにかく4日間、時間をつくって「眠れるだけ寝る」。そうすると初日はたとえば10時間くらい寝られるが、2日目、3日目となるに従い少しずつ短くなり、4日目くらいから安定する。この安定した睡眠量が、必要十分なのだと。

 柳沢 それが最適な方法ですが、そうはいっても4日もかけてそんな検証をする時間はない、という方もいるでしょう。それならばせめて1週間、毎晩普段より30分早く寝てみていただきたい。これまでより30分長く眠るよう心がけるんです。そして前と比較して自分の体調はどうか、と自問自答する。もしそれでちょっと調子がいいと感じたら、それはすごく大事な実感です。

 真山 柳沢さんに教えていただいた、16人の若者を対象にした「眠れるだけ寝る」実験では、「十分な睡眠時間」の平均は8時間25分と出た。本人たちの自覚する十分な睡眠時間である7時間25分よりも1時間長かった。つまり、自分が思っているより睡眠時間は必要なのだ、ということですね。

※この続きでは、「睡眠不足症候群」「睡眠時無呼吸症候群」などの疾患について語り合っています。約6900字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年11月号に掲載されています(柳沢正史×真山仁「デキる奴ほどよく眠る」)。

■柳沢正史(やなぎさわ・まさし) 1960年、東京都生まれ。筑波大学大学院医学博士課程修了。テキサス大学教授等を経て、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構長。睡眠制御物質「オレキシン」を発見

■真山仁(まやま・じん) 1962年、大阪府出身。同志社大学法学部卒業後、新聞記者等を経て2004年に『ハゲタカ』でデビュー。現代社会の歪みを鋭く描く作品を多数発表している

柳沢正史の快眠脳 (文春新書 1546)

真山 仁

文藝春秋

2026年10月16日 発売

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】昭和百年 美しき日本人50/特集 睡眠は最高の健康投資だ/田中眞紀子 高市早苗に問う

2026年11月号

2026年10月9日 発売

1350円(税込)

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