――忙しく過ごす中で、人付き合いに変化はありましたか。

立川 売れる、売れないに限らず、社会に出ると皆さんそうなのかもしれませんけど、売れる前の自分を知っている人が、とても大事に思えるようになりました。同級生や、昔からの友達ですね。

 自分の座標軸を失いたくなかったんです。いろいろなことに翻弄されそうになっても、それは持っていないといけない。そういうとき、昔の自分を知っている、生き証人のような人と飲みたくなるんですよ。

ADVERTISEMENT

 ミュージシャンやスタッフには友達がいます。でも、いわゆる芸能人の友達はいないですね。

「それが大事」の160万枚ヒットを超えようとする苦難

――大ヒットのあと、曲作りにはどんな影響がありましたか。

立川 大変でしたよ。「もう一発いけ」と言われるんですけど、ああいうタイプの曲を書いたのは初めてだったので、その後はひねり出そうとしても、なかなか出てこなくて。頑張って作ったのが、アニメ「クレヨンしんちゃん」のエンディング曲「うたをうたおう」でした。

「それが大事」は160万枚くらい売れたと言われていますけど、そんなことを言われても、自分には実感がないんです。「中国でも売れているぞ」と言われても、リアリティーがなくて。ただ、実際に中国へ行くと、今でも歌ってくださるんですよね。

 そんな化け物みたいな曲を超えるなんて、なかなかできないでしょう。次の曲も60万枚くらい売れたのに、160万枚から比べると3分の1以下だから、もう駄目だと言われるんです。

 このままだんだん衰退していくのかなと思っていました。だから、とにかく好きな曲を作っていこうと。自分発信で、自分勝手に作れるようになりたい、と思うようになりました。

©釜谷洋史/文藝春秋

――「それが大事」とは違う形で、アニメを通して曲に親しんだ人もいます。アニメ「ポコニャン!」(NHK総合および教育テレビ)の主題歌「賽は投げられた」も印象的でした。

立川 だいぶディープなところまで、ありがとうございます(笑)。あの曲は、アニメを意識して作ったわけではないんですよ。だから、僕のほうから「これ、使っていいの?」と聞きました。

「賽は投げられた」って、古代ローマの政治家のユリウス・シーザーの言葉じゃないですか。それを「ポコニャン!」で使うのはどうなんだろう、と(笑)。

――子どもの頃に聴いて、曲の雰囲気とアニメのかわいらしさとのギャップが心に残りました。

立川 そうなんですよ。あの曲が流れる一方で、番組では「ポコニャンスロット!」とスロットが始まったりする。不思議な組み合わせでしたよね(笑)。