聴いた人の思い出や思い入れで一人歩きする「それが大事」

――制作を続ける一方で、「それが大事」も長く歌われています。ご自身と曲との距離感は変わりましたか。

立川 曲って、一人に聴いてもらったら、その人の思い出や思い入れによって、一人歩きするんです。自分の手を離れていく。年々、「もう俺のものじゃないんだな」と感じています。

 今、その辺で「それが大事」を歌ったとしても、人が集まってくださると思います。でも、それは皆さんそれぞれの思い出があるからなんですよね。歌うたびに、それを感じます。

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「本当に俺が書いたのかな」と思うこともあります。自分で書いた曲なのに、どこか人の曲をカバーしているような感覚で歌っていますね。

©釜谷洋史/文藝春秋

「あの曲は強いんだな」と感じた出来事

――曲を聴いた方からの言葉で、作ってよかったと思うこともありますか。

立川 「励ましてもらいました」と、お手紙やメールをいただくことがあります。

 中でも印象的だったのは、がんで闘病されている方の奥様から、お便りをいただいたことです。返事を書いてお送りしたら、ご主人がそれを病室に貼って、闘病を頑張ってくださったそうなんです。その後、「がんが治りました。立川さんのおかげです」と言っていただきました。

 でも、それは僕の手柄じゃない。その方自身が病気と向き合ったんです。「自殺を思いとどまりました」というお手紙をいただくこともありますけど、それも皆さんが、あの曲を自分を励ますために使ってくれたんですよね。

 僕は曲を作って歌っただけです。皆さんがすごいんですけど、そういう声をいただくと、やっぱり作ってよかったなと思います。

――2015年には『しくじり先生』にも出演されました。あの番組をきっかけに、曲の受け止められ方が変わったと感じましたか。

立川 特にないですね。あの曲は強いんです。さっきも言ったように、聴いた人それぞれの思い出や思い入れがあるから。

 以前、ダウンタウンの「笑ってはいけない」の番組に出たときには、ものすごい替え歌を歌ったんです。1、2通「ショックでした」という声も届きましたけど、大きなクレームは来なかった。「あの曲は強いんだな」と思いました。

『しくじり先生』では冗談も半分に、実際に感じたことも話しています。全員に好かれることはできませんし、そうしようとも思っていないんです。