やや間隔が空いた2018年に刊行された第五長篇『沈黙のパレード』では、湯川は教授、草薙は係長に昇進している。19年前、まだ駆け出しの刑事だった頃の草薙が担当した未解決殺人事件で無罪となった男が、新たに発見された白骨事件の容疑者として再浮上するが、今度はその男が殺害される。『容疑者Xの献身』や『聖女の救済』のように湯川の前に天才が立ちはだかる構図ではなく、さまざまな人間の思惑が絡み合って事件が複雑化する展開であり、そのぶん、関係者たちの心情の描写に筆が費やされている。
第六長篇『透明な螺旋』(2021年。文庫化の際に短篇「重命る」を併録)は、謎に包まれてきた湯川のプライヴェートが明かされる異色作だ。本書では、元医師である父・晋一郎、そして認知症が進んだ母とともに、横須賀の彼らのマンションに同居している湯川の姿が描かれる。のみならず、それまで伏せられていた湯川の過去が明らかとなるのだ。
訃報の直後に刊行された『永遠の記憶』
そして2024年、文藝春秋は『透明な螺旋』文庫版の発売を記念し、「東野圭吾を爆流らせろ!」というキャンペーンを開催した。これは、ガリレオ・シリーズの短篇のタイトルを読者から募集し、東野が選んだタイトルで実際に短篇を執筆する……というものだ。応募総人数約1万人、応募タイトル総数2万9000個超、その中から選出された最優秀賞は「日常る」。このタイトルの短篇は「週刊文春」に掲載されたが(現時点で単行本未収録)、それと最後まで競ったタイトルのうち「履歴る」と「終活る」は、長篇の第一部と第二部のタイトルとして使われた。その長篇とは、著者の訃報の直後に刊行された『永遠の記憶』(2026年)である。
