話題書『部下としてのAI』が版を重ねる米マイクロソフトの現役エンジニア・牛尾剛さん。多国籍のチームメイトと円滑なコミュニケーションをとるために、どんな語学学習をしてきたのだろう? とくに海外で働きたい人は必見の、実践的英語学習法!

(※本稿は、前掲書から一部抜粋したものです)

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牛尾剛氏 撮影・石川啓次(文藝春秋)

実務レベルでの英語をどう身につけるか?

 エンジニアのみなさんの中には、日常的な英会話ならともかく、実務レベルでのやりとりはどうするのだろうかと疑問に思う方もいるだろう。日本語でだって面倒な、専門用語を使ってインシデントの原因を話し合ったりPRの意図を説明したりするようなやりとりが、英語でできるのだろうかと。

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 技術系の英語学習への道のりに対する私の回答ははっきりしている。100%多読だ。先のメソッドで半年間、しっかりと英語脳をつくり上げたら、あとはもうひたすら多読に打ち込む。

 最初はとにかく簡単なものから始めよう。いきなり難しいのをやると挫折するので、初級のものから読んでいく。各出版社で「Graded Readers」というレベル別のシリーズが出ていて、世界の文豪の作品から偉人の伝記まで、幅広い内容を楽しめる。これらを辞書を引かずに読んでいく(辞書を引かなくてもわかるレベルから始める)。読むだけでなく、音読して、録音して、修正して繰り返し読むのもお勧めだ。すると語彙がコンテキストから蓄積されて、自然な英語が身につく。英語を英語のまま理解する脳になる。

 ある程度、多読の習慣がついてから専門性の高いテキストに移行するとスムーズだろう。専門的な洋書は電子で購入し、AIエージェントに翻訳・解説してもらいながら読む。

たくさん読んでコンテキストの中で理解する

 例えば、コードの良し悪しについて知見を深めたいエンジニアは、Tom Long 著『Good Code, Bad Code』がお勧めだ(日本語訳も出ているので、不安なら傍らにおいて読むといい)。生成AIのテーマなら、Chip Huyen著『AI Engineering: Building Applications with Foundation Models』はうってつけの本だろう(補足すると、エンジニアがよく使う各用語はアーキテクチャ構造の中での役割があるので、メンタルモデルを英語で書き出すのもおすすめだ。実際英語のまま構造を理解しておくことは、プレゼンやディスカッションにさいしても実務で大いに役立つ)。

©AFLO

 昔、私がいたアジャイルのコミュニティで一番英語ができたのは安井力(やっとむ)さんだったが、彼も多読派だ。彼も文法や単語帳で覚えるとかではなく、たくさん読んでコンテキストの中で理解していく。語彙力が最強だし、英語でライティングしたときの文章に日本人っぽさがなく、本当に自然だ。

 読む本は、ここに挙げた本にこだわらず、自分が最も興味があるものにするとよいだろう。私は趣味のディープブルースの本もいろいろ読んだ。Bookly というアプリを使うと、1日どれぐらい読んだとか、進捗状況やペースなどを記録してくれるので、モチベーションが続きやすい。