安定した老後ライフを送るにはどうしたらいいのか。ある男性は60歳で定年退職して、完全リタイアすることに。退職金と貯金合わせて2000万円が手元にあり、明るい老後の見通しただったが、5年後にまさかの暗転をしてしまったのはなぜか。FPの水上克朗さんが解説する――。
*本稿は、水上克朗『56歳で崖落ち、そこから資産を「1億円」に増やしたFPが教える老後破産しない選択』(オレンジページ)の一部を再編集したものです。
早く、そして長くもらったほうが得に決まってる!
「どうせ長く生きられるかわからないし、もらえるものは早いに越したことはないよね」
60歳の頃、定年が近づいた佐々木巧さんは近所の居酒屋で店の大将と話しているうち、気持ちよく酔いながらそんな決断をしました。
そして勤めていた建設会社で定年退職を迎えると、その後は再就職せず完全リタイアの道を選んだのです。佐々木さんは、38年間会社員として勤め上げ、現役時代の平均年収は約500万円でした。
佐々木さんはずっと独身で、気楽なサラリーマン生活を過ごしてきました。結婚したいと考えた時期もありましたが、自分の好きな映画やジャズといった趣味の世界を誰にもじゃまされたくない気持ちが強く、面倒になってしまったのです。
佐々木さんの退職金は1800万円。その時60歳で200万円の貯蓄もありました。合わせて2000万円の貯金を手にすると、気楽な独身の佐々木さんにとっては十分すぎる老後資金のようにも思えました。
「早めに年金を支給してもらえれば、結構優雅な老後生活が送れそうだ……」
そんな風に都合のいい目算を立てていたのです。
しかし本来月15万円ほど受け取れるはずだった年金は、60歳からの繰上げによって約11万4000円にまで減額(15万円×24%減)。
一度減額された年金は、一生戻ることはありません。佐々木さんはその時、「まあ、少し減るくらいなら問題ないだろう」と軽く考えていました。