会社のストレスからは解放されたが……

〈ただ、ちょうどその時期を境に、椎名さんの仕事を取り巻く環境が変化してしまったという。〉

 業務に関連したビジネス書を頼まれて書いたことで、外から執筆の依頼が来るようになったんです。社長は応援してくれたのですが、専務、常務といった人たちのジェラシーというか反発を買い……要するに居づらい雰囲気を感じ、仕事も楽しくなくなってきてしまった。

椎名誠氏 ©文藝春秋

 そうこうしているうちに、初めて書いたエッセイ集が思いのほか売れた。すでに友人の目黒考二らと『本の雑誌』も創刊していました。これはフリーの物書きとしてやっていったほうがいいのか……と悩むことになりました。子どももふたりいたし、社長にはゆくゆくは君を後継者にしたい、などとも言われていたからなおさら悩んだ。

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 で、そういう懊悩がぼくの心身に負担をかけたんでしょう。気がつけば、真夜中の2時や3時といった時刻に突然バチッと目が覚めるようになってしまったんです。一度目が覚めると超覚醒して、もう寝られない。本格的な「不眠時代」の始まりです。

 結局、36歳のときに書いて食べていくと決め、会社を辞めました。これで会社のストレスからは解放され、好きなときに起き、好きな仕事だけをする……。まあじっさいにそうはなりましたが、別の問題が起きた。

 まず、通勤によってある程度保たれていた生活のリズムが崩れました。それまでは仕事帰りに酒場に行っても、ちゃんと終電で家に帰っていましたから。そして、朝だろうが真夜中だろうが、編集者などから仕事の電話がかかってきて起こされる。加えて、あろうことか、いまで言うストーカーみたいな女性が現れ、ぼくの生活と精神状態をかき乱した。

 睡眠はメチャクチャになりました。いろんなストレスが枷(かせ)となり、なかなか脳が興奮から解放されず、眠る態勢に入ってくれない。

※約5000文字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年11月号に掲載されています(椎名誠「82歳の『不眠半世紀』」)。
・無理に治そうとしないほうがよい?
・頼ってきた“入眠グッズ”は

文藝春秋

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82歳の「不眠半世紀」

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】昭和百年 美しき日本人50/特集 睡眠は最高の健康投資だ/田中眞紀子 高市早苗に問う

2026年11月号

2026年10月9日 発売

1350円(税込)

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