世界的な睡眠研究者・柳沢正史氏と小説家の真山仁氏が対談。睡眠研究の最前線についてとことん語り合った。

◆◆◆

睡眠不足がもたらす疾患リスク

 真山 睡眠不足がさまざまな疾患にかかるリスクになり得るということも、証明されているようですね。

ADVERTISEMENT

筑波大学の柳沢正史教授(66)は、睡眠を制御する物質「オレキシン」の発見により米国でもっとも権威のある医学賞「ラスカー賞」を受賞 ©文藝春秋

 柳沢 医学的なエビデンスはすでに山ほどある、と言ってよいでしょう。睡眠不足を含む睡眠障害は、メタボリック症候群、認知症やがんなどのリスクを高めることがわかっています。健康を考えるうえで、睡眠はけっして無視できません。

 たとえばアメリカ心臓学会(AHA)は長年にわたり、循環器疾患を予防する7つの要素を提唱しています。血圧に気をつけよう、コレステロール値に気をつけよう、運動習慣を持とう、といったことですが、4年前にこれが8つに増えた。それは何かというと「健やかな睡眠」なのです。循環器疾患を予防するためにもより多く寝なければいけない。そういう時代です。

 真山 最近は枕などの寝具だったり、リカバリーウェアという名の寝間着だったり、睡眠まわりのビジネスがすごく拡大しています。そのなかで「睡眠の質を高めよう」という謳い文句をよく見ます。

『ハゲタカ』などの作品で知られる小説家・真山仁氏が「眠りの極意」を柳沢正史氏に訊いた一冊 ©文藝春秋

 柳沢 リカバリーウェアの人気は象徴的ですね。

 真山 私もリカバリーウェアは普段から着ているのですが、寝ているときに足が攣らなくなった。血行が良くなったからかなと思っているのですが。

 柳沢 体を温める機能があるから、攣りにくくはなりますよね。こういった服に睡眠改善効果があるのかどうか、検証する論文が2報出ています。いずれも「効果があるかもしれない」というレベルで、数字を見ると、効果量(差)が小さかったり、主観的な改善が無かったりです。