『ジン×エクソシスト』

 レニー・ハーリン監督、ここに復活!

 1990年代に『ダイ・ハード2』『クリフハンガー』と、「細かいことはどうでもいい! 派手にやってやるぜ!」と言わんばかりに、豪快かつスケールの大きなアクション映画を連発、あの時代を代表する監督の一人であった。が、ここ30年! 近くは――全てを観てきたわけではないが――イマイチどころか、「あれほどの映画を作ってきた監督がなぜこんな――」と呆れるような出来が続いた。

 それだけに、本作に関しても正直なところ全く期待はしていなかった。それでもあえて観たのは、「話のネタになるかも」くらいのモチベーションだった。ところが、だ。本作は素晴らしく快調なのだ。

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『ジン×エクソシスト』

 軸になるのは、アメリカの新婚夫婦。夫は結婚してすぐに兵士としてアフガンに向かわされる。ようやく戦場から帰還したものの、それ以来、様子がふさぎこんでいる。セラピストは戦地でのPTSDと診断するが、やがて夫は凶行に走るようになっていく。中東の悪魔が取り憑いたと疑う妻は、イスラム聖職者に悪魔祓いを依頼する――。

 こう書くと、昨今のハリウッド映画にありがちな、コケおどし系の安っぽいオカルトホラーのように思われるかもしれない。が、全くそうではないのだ。

 戦争帰還兵の苦しみ、ムスリムへの差別、民族・宗教間の相克といった現代の問題を「悪魔憑き」をメタファーとして利用しつつ物語の中に巧みに織り交ぜている。さらに、それらがとってつけた主張で終わらず、個々に劇中で作用し、全てがドラマチックな効果をもたらしている。

 全盛期のハーリン監督作のようなスケールはないが、見応えは十分。むしろ、かつてとは違って派手なアクションに頼らずに丁寧に物語を紡ごうとする姿勢に、ベテランとしての成熟と新境地を垣間見た。

『ジン×エクソシスト』
監督:レニー・ハーリン/出演:ソフィー・シムネット、ラザ・ジェフリー、アストン・マコーリー/2023年/アメリカ/92分/配給:Atemo/©2023 REFUGE PRODUCTIONS, LTD All Rights Reserved./上映中