「壁に不審な穴はないか、タバコの箱やカフェの紙コップなどが置かれていないか、チェックするのは常識。ひとつでもおかしなところがあったら、別の個室に入る。これ、公衆トイレでの鉄則ですよ」(30代女性)

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 そう、これは、もちろん、マナーの話などではない。

 韓国で今、盗撮を防ぐ最低限の手立て、なのだ。

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関連事件はこの5年間で6~7倍

 韓国では、盗撮(違法撮影)、盗撮した映像の流布、リベンジポルノなどは「サイバー性暴力」や「デジタル性犯罪」と呼ばれる。関連事件はこの5年間で2.7倍ほど(検挙件数2400件から6470件に、ソウル市地方警察庁)に増え、その巧妙な手口についてはテレビなどでも詳細に報じられていた。

 韓国の全国紙記者は言う。

「盗撮だけに限れば6~7倍にも増えたともいわれています。韓国では携帯での盗撮よりも、トイレの壁や部屋の天井などにある小さな穴に小型カメラを仕掛ける場合が多いといわれます。常套手段は、トイレのゴミ箱に捨てられたタバコの箱やカフェで使われるコーヒーの紙コップなどに仕掛けるという手口。カメラのサイズもどんどん小さくなっている」

 冒頭の女性に言われて、公共の場で不自然に紙コップが置かれていたりしたことを思い出した。あらためて公衆トイレを観察してみると、女性化粧室の個室の壁に無数の小さな穴が空いているところがあり、そこにトイレットペーパーが詰められていることもあった。思い起こせば以前にも見かけたことがあり、その時は誰の悪戯なのかと思ったりしたが、こんな事情が背後にあったのかとぞっとした。

男性ヌードモデルの盗撮から火がついた

 韓国で盗撮問題が熱いイシューとして浮上したのは、この5月からだ。発端は、「弘大(弘益大学)ヌード盗撮事件」だった。

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 弘益大学は韓国随一の芸術大学として知られ、大学の周辺は観光客にも知られる若者の街。時代の先をいく店やクラブなどがぎちぎちに軒を並べ、店の変遷は、そのまま韓国の若者たちの時代の変遷史ともいえる。

 この通称、弘大で、クロッキー(写生)の授業中に男性モデルのヌードが盗撮され、その映像が流布される事件が起きた。

 映像が出回ってからほどなくして犯人が逮捕された。盗撮してその映像を流布したのは、同僚の女性モデル(25歳)で、8月に懲役10カ月の実刑を受けた(翌日、控訴)。