頭の柔軟性、ひらめきが問われるような問題
今年の「高校生クイズ」で優勝したのもまた、桜丘高校だった。メンバーは小林雅也君、東問(ひがし・もん)君、東言(ひがし・ごん)君の2年生トリオだ。
東兄弟は、競技クイズの世界では強豪として知られている。両者とも鹿児島ラ・サールから桜丘に転校し、「高校生クイズ」優勝を目指した。青春をかけてのチャレンジである。その彼らにとって、新しい「高校生クイズ」は当初想定していたものとは全く違ったはずだ。
「高校生クイズ」は、多少の変遷があるにせよ、基本的には広く深い知識や、学力をベースにした能力を問うてきた。
しかし今年の「高校生クイズ」からは、その形式が一変した。キャッチフレーズは「地頭力No.1 決定戦」。知識はほとんど必要とされない代わりに、謎解きやパズルなど、頭の柔軟性、ひらめきが問われるような問題が多く出題されるようになった。
そもそも、「地頭」(じあたま)とは、何か。2018年に出版された『広辞苑』第7版には以下のように記されている。
じあたま【地頭】
(1)かつらを用いない頭。地髪(じがみ)。
(2)生れつき備わった頭の働き。
2の意味は、第7版から新たに加えられた。要するに現在の意味で使われる「地頭」とは、平成も半ばになって一般化したものである。
「開成が出てない『高校生クイズ』なんて」
謎解きやパズルなどをメインとした2018年の「高校生クイズ」では、これまでさほど目立たなかった高校が大きく躍進した。一方で、開成や灘など、伝統的な強豪校の多くが、地方予選の段階で姿を消していた。
「開成が出てない『高校生クイズ』なんて」
そんな声も耳にした。そうした中で、競技クイズ強豪校の桜丘は勝ち進んだ。全国大会では、以下のようなテーマも出された。
「多くのタイヤをいかに効率よく離れた場所まで運ぶか」
「文房具店で揃えられる道具で、200個の風船を短時間でどれだけ効率よく割れるか」
「5メートルの壁をどのようにして乗り越えるか」
これらは「地頭力」のみならず、時に現実の体力も試される。
桜丘のメンバーは、うまく対応した。たとえば風船を割るというテーマに対しては、リモネンという成分が入った接着剤をはがすスプレー(有機溶剤)を風船にかけるという方法を思いついた。日頃つちかった知識がなければ、思いつかないものだろう。そうして、堂々の優勝を果たしている。
筆者が見た限りでは、今回の「高校生クイズ」に対しては、視聴者からはかなり好意的な意見が多かった。
一方で、従来の「高校生クイズ」からはかなり離れた方式に、戸惑いの声も少なからず見られた。実際に参加した高校生たちにとっては、賛否両論、といったところだろう。
「高校生クイズ」は大きく変わった。そしてこの先もまた、どんどん変わっていくかもしれない。
一方で、従来型の競技クイズを愛する高校生が、変わらず活躍できる場所は用意されていてもいいのではないか。
奇しくも同じ2018年。「ニュース・博識甲子園」はそうした高校生たちのための、新しい舞台となった。