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脚本ではできなくて小説で書けることとは?

「ハラスメントの種は世の中にいくらでもあるから、読者が飽きることのないようにバリエーションをつけることは意識しました。嫌がらせが起こった事情を書く時は、した側、された側の両方から描くようにもしました。セクハラにしろパワハラにしろ、つまるところやっぱり人間関係ですから。初めての小説を、読者がどう読んでくださるか楽しみにしています。小説は一気読み、ながら読み、何日も空けて読むこともある。どんな読書習慣でも、いい意味で読み捨てにしてもらえたら、と思っています」

いのうえゆみこ/1961年、兵庫県生まれ。立命館大学文学部卒業。テレビ局勤務を経て、91年に脚本家デビュー。99年橋田賞、2007年向田邦子賞など受賞多数。脚本作品に『きらきらひかる』『GOOD LUCK!!』『14才の母』『昼顔』など。話題作を多数手がけている。

 いざ執筆し始めると脚本と小説の違いを痛感した。

「脚本でできなくて小説で書けることには、主に3つあると思います。まず、登場人物の様子が描けます。脚本では身長180センチと書いてしまうと、役者の選択肢が狭まってしまうので、人物のディテールが書けないんです。それから、人物の心理描写。そして、何よりお話の長さを放送時間を気にせず自由に延ばせるのが面白かった。『この部分、もっと書きたいから長くしちゃえ』と、ノリで広げていってもいい。書きたいことが書きたい分だけ書けるというのは爽快でしたね」

ハラスメントゲーム
スーパーマーケットチェーンの地方店舗の店長・秋津渉に、社長の特命が下る。食品異物混入事件を調査、解決せよ。コンプライアンス室長に任じられた秋津は、ただ一人の部下である高村真琴とタッグを組み、会社を襲うあらゆるハラスメント事案に取り組んでいくうち、やがて会社の隠された秘密に直面することに――。

ハラスメントゲーム

井上由美子(著)

河出書房新社
2018年10月5日 発売

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