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井上由美子が語る「ドラマの脚本ではできなくて、小説ではできる3つのこと」

著者は語る 『ハラスメントゲーム』(井上由美子 著)

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『ハラスメントゲーム』(井上由美子 著)

 テレビドラマの脚本家として『白い巨塔』や『14才の母』など、数々のヒット作を生み出してきた井上由美子さんが初めての小説を発表した。

「きっかけは編集者に口説かれたことでした。でも、小説の書き方なんて知らないので、依頼から6年もかかってしまいました」

 井上さんが小説のテーマに選んだのは、「ハラスメント」。

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「私が仕事をはじめて四半世紀、テレビドラマで選べるテーマの幅は確実に狭まりました。読者が自分で選ぶ小説には、まだ自由があるように感じます。でも、絶対映像化できないものを書いてやろうという野心はありませんでした。テレビとは違う見せ方、切り口があるんじゃないかと思いながら執筆を続けました」

 舞台は大手スーパーマーケットチェーンの本社。ある事件をきっかけに、地方に飛ばされていた元エリートサラリーマン秋津渉(わたる)が呼び戻され、コンプライアンス室長に任じられることから物語は始まる。イクメンへの部内での嫌がらせ、社長の軽率なひと言に怒りを燃やしたパートの主婦たちの反乱……秋津はコンプライアンス室での唯一人の部下である高村真琴と協力し、社内の事件を次々解決していく。