いまアジアの各地で生きる人は、いったいどんな光景の中で暮らし、何に悩み、どう自分の問題と向かい合っているのか。そうしたことが手に取るように伝わってくる展覧会が開催中だ。東京都写真美術館での「愛について アジアン・コンテンポラリー」展。
自分にとって切実なことから、作品は生まれてくる
アジアで活動する6人の写真家・アーティストによるグループ展だ。
韓国のキム・オクソンは、済州島に住む国際結婚カップルを撮った《ハッピー・トゥゲザー》を展示し、キム・インスクの《サイエソ:はざまから》は在日コリアンの家族の肖像を並べたもの。
台湾のホウ・ルル・シュウズは写真と文章を組み合わせた《高雄眷村三部曲 A Trilogy on Kaohsiung Military Dependents’ Villages》で参加している。
須藤絢乃は、行方不明になっている女子の写真に、自身が成り代わるセルフポートレート《幻影Gespenster》などを出品。中国のチェン・ズ《蜜蜂》はリストカット行為をテーマにしており、シンガポール生まれのジェラルディン・カン《ありのまま》は、ふだんの生活空間で、自身の家族のポートレートを撮っている。
これら写真作品からは、ビジュアルとしての完成度や美しさとともに、いまアジアで生きている人たちのナマの感情がときに痛いほど伝わってくる。
今展の構成の意図について、展示の企画者、笠原美智子さん(石橋財団ブリヂストン美術館副館長、前・東京都現代美術館事業企画課長)に話を聞いた。
1990年の東京都写真美術館第1次開館当初から学芸員として加わり、長らくジェンダー、アメリカ近代写真、現代写真などの分野で数多くの展覧会を企画してきたのが笠原さんである。