親、パートナー、友人などとの人間関係の積み重ねで、対人関係の「型」(アタッチメント・スタイル)が作られていくとされる「アタッチメント理論」。
「アタッチメント理論」研究者で、青山心理臨床教育センターでカウンセリングも行っている立教大学現代心理学部の林もも子教授によれば、自分の「型」を自覚することが人間関係改善のヒントになると語ります。それぞれのアタッチメント・スタイルの人へのアドバイスや、周りの人間関係に悩む人を支えたい人へのアドバイスを伺いました。
あなたはどのアタッチメントスタイルが当てはまる?(質問用紙)
――人間関係の「クセ」を自覚することが人間関係改善のヒントになるとおっしゃっていましたね。アタッチメント・スタイルごとに、本人はどんなことに注意すべきか、また、周囲の人はどう接すればいいかを教えてください。
林 人間関係に悩んでいる人は、その人にとって安心する人間関係を作る「妨げ」になっているものが何かに着目することが鍵になります。そして、その「妨げ」となっているものはアタッチメント・スタイルごとに異なります。具体的に見ていきましょう。
「とらわれ型」や、その周りの人へのアドバイス
林 「とらわれ型」の人にアドバイスしたいのは、極端に甘えてしまうところがあるので、人に頼るのを少し控えてみる。また、相手に拒絶されたときに「相手が悪い」とつい思いたくなってしまうところがあるかもしれませんが、立ち止まって自分の側にも原因があったんじゃないかと考えてみる。
逆に、「とらわれ型」の人との関係に悩んでいる人は、はやい段階で「ここまでしか入っちゃ駄目よ」と境界線を伝えておく。また、「とらわれ型」の人は見捨てられる不安が強いので、いじけたり、怒っちゃったりした場合は「どうしたの? 嫌いになっちゃったわけじゃないよ」とこまめに言ってあげる。距離を取る場合も、いきなり関係を切るのではなく、徐々に距離を作るのが大事だと思います。
「恐れ型」や、その周りの人へのアドバイス
林 「恐れ型」の人は傷ついた経験が安心できる人間関係の妨げになっているので、まず自分を傷つけないような、安心できそうな人に、自分から近づいてみることから始めてみるといいと思います。
「恐れ型」の人との関係に悩んでいる人は、何せ相手はビクビクしている人なので、慎重に近づく。「恐れ型」との関係に悩む「恐れ型」の人の場合、おたがいになかなか近づけないこともあるのですが、そこは近づいていく側がちょっとがんばる、ということが大事だと思います。また、近い関係を好む「とらわれ型」の人は、いいと思って近づきすぎると「恐れ型」の人は引いてしまいお互いにつらいので、ゆっくり関係をちかづけるといいと思います。
「怒り―拒否型」「引っ込み型」や、その周りの人へのアドバイス
林 「怒り―拒否型」「引っ込み型」の人は他人をもうちょっと信頼して任せてみる、頼ってみるというのが入り口になるはずです。「怒り―拒否型」の人と関わる際のアドバイスとしては、ケンカになりがちなので、関わるほうが怒りをコントロールする必要があります。怒っている人はたいてい恐いですから、その恐さを乗り越えること、そして関わるほうが潰れないよう、がんばりすぎず、しんどいときは無理しないこと。「引っ込み型」に対しては「自分でやれます」とピシャッと戸を立てられてしまっても、気長にかかわることだと思います。
「無秩序型」や、その周りの人へのアドバイス
林 「無秩序型」の人は先程もお話ししたとおり、他人への不信感が他のスタイルよりもさらに高いんです。だから、信頼できる人を探して、関係を作ってみること……と言いたいところなんですが、他の人から近づいてあげることのほうが現実的かもしれません。
「無秩序型」の人との関係のコツは、相手に一貫性を求めないこと、そのときどきの態度に応じて対応することです。こうしたことを心得ないと、「この前はうまくかかわれたのに、今日はなんでうまくかかわれなかったんだろう」と気持ちが上下してしまったり、傷ついちゃったりします。