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「子供の頃は、アニメの縦線に救われました」――画家・今井麗の「普通の生活」

今井麗インタビュー #2

note

家族がおしゃべりだったから、臆せず話せるように

――あちらに飾ってあるポスターは?

今井 あれもトリュフォーの映画で、「トリュフォーの思春期」ですね。予備校に通う道中にこういう映画グッズを売っているお店があったので、そこで買いました。映画のポスターやポストカードがとにかく好きでよく寄り道していました。チャップリンの映画も観たし。とにかく字幕が付いているというのが大きかった。でも、その頃そんなの観ている友達がいなかったから、そういう話を学校ではあまりしなかったですけどね。幸いにも、いじめに遭うことなく、友達もできて、休み時間になるのを楽しみに待つような学校生活を送っていました。

 

――今日、こうしてお話を伺っていて、今井さんはおしゃべりがお好きな方なのかなと。

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今井 家族がおしゃべりだったことが大きいと思います。父は画家で、サラリーマンのお父さんみたいに、朝から夕方までいない人ではなくて、ずっと家か隣のアトリエにいたんですね。だから、家の中では私の話を聞いてくれる役でした。子供の頃、私はずーっとお父さんに話しかけていた記憶があります。きっと、すごくつまらない話もたくさんあったに違いないんだけど、父は聞いてくれていて「今、忙しいんだから黙っていてくれないか」というタイプの人ではありませんでした。半分聞いていないようで、聞いているような感じで付き合ってくれて。

 姉もすごくおしゃべりでCMが流れると、そのCMソングを丸暗記して歌うような人でした。家族がすごく明るかったんです。おかげで、私もこんな風にしゃべれるようになったんだと思います。

 

出川さんみたいな感じだと思います

――発音やイントネーションを、お姉さんが直してくれることもあったそうですね。

今井 例えば、果物のカキと生牡蠣のカキのようにイントネーションの使い分けが難しい言葉があったり、サ行の発音を大きな声でどう言っていいかわからなくて、苦手にしていたりはしますけど、基本的には、何も考えないで、パーッとしゃべっちゃうんです(笑)。気にしない。私は、一息呼吸をおいて会話をするということができないので、とにかくしゃべっていますね。あの、テレビで観るタレントの出川(哲朗)さんみたいな感じだと思います。ああいう風にオーバーリアクションな人は、何を伝えようとしているかも分かりやすいです。

 

――出川さんこそ、まさにマシンガントークですよね(笑)。

今井 きっと出川さんも、あまり考えないうちに、思ったことをしゃべっているんじゃないでしょうか。私、すごく出川さんの気持ちが分かります。考えるより先に、もう言葉が出ちゃうんですね(笑)。こんなに言葉がスラスラ出てくるのって、ちょっと珍しいとは思いますけどね。家族も私も、根っから明るいのがよかったですよね。