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謎に包まれた「ウナギ不正流通」の実態とは……密漁ビジネスに迫る

勝川俊雄が『サカナとヤクザ』(鈴木智彦 著)を読む

2018/11/26

香港ウナギ業界のボスと接触

 ウナギの場合、報告されたシラスウナギの漁獲量と養殖イケスに入れられた量が倍近く乖離していたり、シラスウナギを捕獲していない香港からシラスウナギが大量に輸入されたりしていることから、不正が行われているのは周知の事実である。しかし、当事者は口を閉ざし、どの様な不正行為が行われているのかを部外者が知るのは困難であった。著者は、国内のウナギ関係者に取材をしてその構造について明らかにしている。また、香港のウナギ業界のボスとコンタクトをとり、これまで謎のヴェールに包まれていた立て場(密輸ウナギの集積地・出荷場)の潜入取材も行っている。

 密漁は、これまで存在しないものとして、無視されてきた。本書が影の部分を補完したことで、矛盾に満ちた日本の水産業の全体図が見えてくるし、水産業を改善する必要性についても理解できるだろう。

 本書は、読み物としても単純に面白い。知り合いのヤクザに頼んで、密漁団とコンタクトをとったり、釣り人を装って密漁に同行しようとしたら「餌とクーラーボックスを持っていない釣り人なんておかしい」と断られたり。密漁者は、単に違法行為を行う悪人としてではなく、それぞれの背景をもった一人の人間として描写されている。水産業自体に興味がない人にもぜひ手に取っていただきたい。

すずきともひこ/1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。カメラマン、ヤクザ専門誌「実話時代」編集部、「実話時代BULL」編集長を経て、フリーに。主な著書に『ヤクザと原発 福島第一潜入記』『ヤクザ500人とメシを食いました!』などがある。

かつかわとしお/1972年、東京都生まれ。東京大学卒。東京海洋大学准教授。著書に『漁業という日本の問題』などがある。

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