リスナーから「クレージー相田」と呼ばれるキレ芸
続く相田のトークも強烈だ。英語に堪能なのにニートになったり、ホストになったり、学習院大学に退学届を出して世界一周へ出発するも、なぜか訪れた沖縄で挫折して復学する兄・ともゆきの話題はリスナー間では伝説だ。
「ギャラをガメたろ? 俺がガメるならいいんだけど」「リアム・ギャラガーのモノマネでスベったのは、似てるとおだてたお前のせいだ!」などなど、小宮に執拗にからみ、挙げ句はリスナーのメールへ「ネット民が揚げ足取るな!」と噛みつく。リスナーからクレージー相田と呼ばれ、キレ芸を期待するファンは多い。
そんな放送中、小宮が「こっちは毎日つらいお笑いやってるのに、相田はなんで呑気なんだよ!」と言うと、相田があっさり「つらいお笑いはもうしない」と応じたことがある。いわゆるとんねるず、ナインティナインの体育会系お笑いを否定したのだ。
そんな2人が2018年4月20日、相田の自宅でオールナイトの生放送を敢行した。
相田 ラジオが四年目、お笑いをはじめて14年目。ちょっとマンネリ化してます。場所を変えるだけで新鮮に感じると思うんだ。
小宮 セックスレスの夫婦じゃん。家じゃなくて、場所を変えてラブホテルでやってみようかっていう。
相田 そうそう。
小宮 そうそう、じゃないよ(笑)。
「ただ笑えればいいというのとは違ってきている」
スタジオ以外での放送ならば、部屋を壊すなどのお約束のハプニングが用意されているはず。それを相田が「そういうのはもう古い」と一蹴。結果、相田の部屋でエミネムなどの音楽を大音量でかけながら餃子をつくるというだけの恐ろしくゆるい展開で番組は終わる。この放送は衝撃だった。トーク合戦もないのにムチャクチャ面白かったのだ。小宮が頻りに「誰が笑うの? 落ち着かないよ」とボヤくのをよそに上機嫌で進行する相田。番組にそぐわない狭い自宅で行う変なライブ感。そして友達同士がダラダラ喋る何気なさに奇妙なグルーヴが宿っていた。
ポリコレの風当たりが強くなった現在、「ただ笑えればいいというのとは違ってきている」(相田)と感じている二人が提出した笑いのあり方が自宅生放送に込められていたのだ。
テレビは未だに80年代からの体育会系の笑いを脱却できていない。若い世代のテレビ離れも拍車がかかっている。そう、三四郎が大ブレイクしようにも、彼らを押し上げる環境が整っていないのだ。しかし小宮と相田は指をくわえて時が来るのを待ってはいない。「著しく売れかけ」つつ、深夜ラジオという武器を使い、いつ来るかわからない「次の笑い」へ向けて挑戦しているのだ。
三四郎、こうなったらずうっと一生、著しく売れかけであれ!
※「文春オンライン」2018年7月27日インタビュー記事より
写真=山元茂樹/文藝春秋