2019年の日本が直面する重要課題、それは安倍政権の行方である。9月の沖縄知事選に大敗し、状況は厳しさを増した。生き残りをかけた衆参ダブル選挙は実現するのか。また、北方領土返還はどう影響を与えるのか――。池上彰氏と佐藤優氏が、ニッポンの政治問題に斬り込む。(『文藝春秋オピニオン 2019年の論点100』より)

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佐藤 来年の内政・外交を占う上で、決定的に重要だったのが、9月30日に行われた沖縄知事選挙でした。公明党が総力を挙げ、自民党は菅義偉官房長官が現地に乗り込んで建築業者を締め上げたにもかかわらず、8万票あまりもの差をつけられて大敗してしまった。これはつまり、このままでは来年夏の参議院選挙でも、自民党が大敗する可能性が高いということです。

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 今、官邸の脳裏をよぎっているのは、1998年の橋本龍太郎政権ではないでしょうか。橋本政権も、参議院選挙の前年の今ごろまでは4割を超える支持率でした。それが、その後どんどん下降し、選挙の途中から橋本降ろしが始まった。そして選挙では大敗、橋本総理は退陣します。安倍政権にもその可能性が出て来た。

 だから、安倍政権が生き残るためには、衆参ダブル選挙が死活的に重要になってきているのです。

右から池上彰さんと佐藤優さん ©文藝春秋

池上 来年10月に予定されている消費税の税率アップのあとに総選挙をすれば負けるに決まっています。しかし5月には天皇の代替わりがあるので、それが終わるまで選挙はできない。

『文藝春秋オピニオン2019年の論点100』掲載

混乱の原因を作ったのは枝野氏

佐藤 消去法でいくと、参議院選挙にぶつけるしかなくなるわけです。

 ダブル選挙になるとどうなるか、各党の状況を見てみます。まず、公明党は前回減った議席を少しは取り戻せると判断しているはずです。共産党は確実に議席が増えるから大喜びでしょうが、大勢に影響はない。

 そして、立憲民主党は枝野幸男代表の権威がどの程度保たれているかにかかっていますが、今回の沖縄知事選挙のようすを見ると、私はかなりむずかしいと思います。

 そもそも、沖縄から見て、今の普天間基地移設問題の混乱の原因を作ったのは、民主党の菅直人政権であり、そのときの官房長官であった枝野氏なんです。

枝野氏 ©文藝春秋

 自民党時代から工法についてはさまざまな議論がありましたが、最終的にV字型滑走路を作ると決定したのは菅政権のときです。東日本大震災の処理でバタバタしているとき、どさくさにまぎれて外務官僚と防衛官僚で決めた。それ以来、止まっていたさまざまなことが動き出したのです。ですから、沖縄県民の目に枝野氏は、問題の端緒を作った人間に映っている。それが今回、基地移設を見直すと方針転換し、あたかも沖縄の味方であるかのように振舞ったことに対して、県民の忌避反応にはかなり強いものがありました。

 さらに、立憲民主党は沖縄県連を作りましたが、有田芳生氏という京都出身の参議院議員を代表にした。沖縄県民からすると、じつにふざけた姿勢です。こうやって沖縄の地雷を踏み続けていることに枝野氏は気がついていない。これまでは自民党の失政によって反射的利益を得てきましたが、メッキが剥げるのも時間の問題だと思います。