昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2018/12/10

「二島返還」で国民の信を問う

池上 しかし、北方領土に対する日本政府の立場というのは、4島「一括」返還、もしくは2島「先行」返還であって、2島返還という立場はありませんでしたね。

佐藤 安倍政権は、いつの間にか、立場を変更したのです。これまで、「一括」か「先行」かの違いはありましたが、4島が日本の領土であるということの確認は絶対条件でした。

 ところが、安倍政権では、どういう形であれ4島の帰属問題が解決さえすれば平和条約を締結してもよい、というふうになし崩し的に基本的立場を変えた。だから、理論的には日本4:ロシア0から日本0:ロシア4まで、5通りのうちどれであっても、日ロで合意さえすれば平和条約を締結してよいのだと考えています。

 しかし、2島で手を打つということになれば、これは国策の変更です。国民の信を問わなくてはならない。だからこそ解散総選挙をやる大義名分になるのです。

©文藝春秋

池上 なるほど。国民の皆様には申し訳ないが、とにかく2島でも手を打つことが国益のために必要なんです、そこで皆様の意思を確認するために総選挙をやります。そう言えば、解散の名目としては納得してしまうでしょうね。

佐藤 野党も反対できないでしょう。それに、もし2島プラスアルファで手を打ったとき、右バネがはねて安倍政権に対する倒閣運動が起きるかといえば、必ずしもそうはならないと官邸は読んでいると思います。

池上 たしかに実現がむずかしい4島に固執して、まったく返ってこないより、2島だけでも返ってくるのは大きな成果だと世論が考える可能性は高い。

©iStock.com

大手メディアも賛成にまわる

佐藤 また、中国の進出に対抗するにはロシアとの関係をよくしておかなくてはならないということも世論を動かすには有効でしょうね。メディアも、読売新聞はそれでやれと言うだろうし、朝日もしぶしぶだけど止むを得ないと。日経は、状況はよくわからないけれども経済にプラスになるのならばよい、と(笑)。

池上 産経は、本来なら2島なんてとんでもないと怒るところですが、安倍政権をつぶしたくないから賛成するでしょう。つまり大手メディアも全部賛成することになる。

佐藤 沖縄知事選で負けたことで、こうしたプロセスが一気に加速しました。

池上 安倍政権のレームダック化もすでに始まりつつありますからね。ウルトラCをやらないかぎりは、もう次はないわけですから。今回、滞貨一掃で、評判の芳しくない人たちを大量に大臣にしたのもそうです。これから間違いなく失言がたくさん出てくることでしょう。

佐藤 前例のあるすごい人たちですからね(笑)。そういう人たちを再度一掃するためにも総選挙は必要なんです。つまり総選挙の後に本格内閣を作る。うがった見方をすれば、失言がどんどん貯金されていけば、それはそれで解散総選挙の理由になる。まあ、そこまで考えてはいないでしょうけれど。

※社会人・就活生なら押さえておきたい 2019年はずせない論点がこの1冊に!『文藝春秋オピニオン 2019年の論点100』発売中

2019年の論点100: 文春ムック

文藝春秋
2018年11月7日 発売

購入する

この記事の写真(9枚)

+全表示

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー