亡骸を解体するような「敗戦処理」をしながら思うこと
別のケースとしては、偉大な経営者が細かな点もいちいち指示しないと気が済まない性格であるがゆえに、毎週のように経営者御自ら会議に出てきてあれこれ指示を出すわけなのですが、日々忙しいので一つのプロジェクトで過去にどんな指示を出したのかすっかり忘れてしまい、毎週会議に出るたびに言ってることが変わり、現場が大混乱した果てに期間も予算も超過したうえ「俺の考えていることと全く違う!!」と言い出して放り投げて全社的に大火災となるわけであります。
で、このぐらいのタイミングになるとなんとか総研からやってきた偉い肩書の人たちや、大手会計事務所から来ていた良い背広を着ているコンサルタントさんたちははすでにフェードアウトしています。当たり前ですよね、責任なんか取りたくありませんから。
そこに呼ばれるのは炎上経験豊富な海千山千としての私たちです。動物は死して土となる過程でカビやミミズが亡骸を解体するように、二度と動くはずのないプロジェクトから使えるものをより分け、テーマを固めてイメージの共有を行い、できることとしたかったこととできないことを分類して優先順位を仕切り直して、そもそもやりたかったことができるようになるまでの再構築をやらされる羽目になるのです。これらは、なんとか総研の偉い人たちが経営者を騙して払わせた金額の10分の1以下しか私たちに払われないことがほとんどで、まあ失敗したプロジェクトをどうにかしようって話なのですから追加予算などたいていにおいて多額には認められることはなく、また経営者ももともと偉い肩書の人に吹き込まれた話から思いついた程度のことですから、私たちが焼け落ちたプロジェクトの敗戦処理をしているころにはすでに「スマート・ワークスペース」とか「ブロックチェーン」など別のキーワードに夢中になっていたりするのです。困ったもんだ。
原資をちゃんと使うなら
いやまあ、一代で財を成すような起業家の人たちというのは、往々にして思いついたことをすぐに実現してみようという行動力、機動力があるからこそ、企業家として成功したとも言えるわけでして、それもまた組織にとっては活気になり刺激的だとも言えるわけですよ。でも、焚き付けたセミナー会社やなんとか総研の偉い人は騙して得た金は全額返金したうえで悔い改めて穴を掘ってその下で土下座して上から土をかけられるべ
そんなカネを払う予算があるならば、マネジメントの手法をある程度教え込んだエンジニアに中小規模のプロジェクトを複数経験させたうえで成功失敗に関わらず給料を倍にしてやれば喜んでどんどんプロジェクトをやろうという気風になるわけです。だって某社なんて言ったら失礼ですが自殺用のロープを売るような提案しかしてこないコンサルに3年間で20億円とか払ってるんですよ。ゴーン会長かよ。原資をちゃんと使うならプロジェクト予算増やしたり、大学との産学連携の研究予算をつけたり、携わるエンジニアの自己研鑽にお金をつけたり、評価制度をきちんとチューニングしてもっとお給料を払ってあげられる仕組みを用意したほうがいいと思います。
後編では「B なぜこんな仕様になった」「C 外注ってのはな、取り換え自由なパーツじゃねえんだよ」と、考察として「なぜ頭のいい人ばかりの組織は頭の悪い決定をしてしまうのか」について語りたいと思います。(後編は12月13日公開予定)