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キズナアイのプロデューサーが考える「サブスク時代に音楽はどう存在すべきか?」

Yunomiの考えるこれからの音楽レーベルのありかた

note

いつまで僕は人に合わせるだけの音楽を作ってるんだろう

――最初の仕事は作曲じゃないんですね。

Yunomi 作曲でお金いただいたのは、それから3年後くらいです。それまでにも専門学校のボーカリストに曲のアレンジをしたりしてましたけど、あくまで勉強の範囲内でしたし。お金が発生した最初の楽曲提供は、北海道のご当地アイドルへのものです。

――これで音楽の仕事を続けていけると思ったのは、いつ頃からなんですか。

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Yunomi 挫折ばかり、コンペにも落ちてばかりだったので、そう思うまでには結構時間かかりました。いつまで僕は人に合わせるだけの音楽を作ってるんだろうって自問自答が続いたんです。でも、無名のトラックメーカーが自分の音楽表現をアップしたところで、なかなか聞いてもらえない。その状態から「抜けたな」って思えたのは、この「Yunomi」っていうコンセプトが浮かんだときです。

本名とは違うアーティスト像を打ち立てた理由

――Yunomi名義を考えついたときってことですか?

Yunomi そうですね。それまで何が辛かったって、自分の作品が否定されたときに、自分そのものが否定された感覚に陥っていたんです。「お前には才能がない」「こいつみたいにいい曲作れ」って言われれば言われるほど、自分の存在価値を考えちゃってへこむ一方。ところが「Yunomi」っていう別人格、本名とは違うアーティスト像を打ち立てればいいんじゃないかって考えてやってみたら、一気に肩の荷が降りたんです。

 

――一種の生き方の発明ですよね。

Yunomi 臆病者の発想なのかもしれないけど、たとえYunomiが成功しなくても傷つかないって思えるようになった。ちなみにYunomiっていうのは日本的なもので、カワイイものをイメージしてつけた名前です。