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「やるべきことを全力で取り組んでいれば人生が開かれていく」

 野球における運、不運は自分が努力することで思い通りにすることが出来るものではない。ただ、運の要素に気持ちを費やする人が大勢を占めているのが世の中の現実である。レアードは祖父、父からコントロール不能の事に労力を費やするのではなく、自分自身が行うことが出来ることに全力を注ぐべきだと教えられ実践してきた。

「起きたことに文句を言うのではなくて、その時に自分が出来ることをする。それはもちろん、野球だけではなくて人生も一緒だと思う。人生には自分ではコントロールが出来ない事の方が圧倒的に多い。それに対して感情的になるのではなく、つねに自分が今、出来ること、すべきことはなにかと考えること。やるべきことを全力で取り組んでいれば人生が開かれていくものだと信じている」

 だからレアードはどのような時も沈着冷静で取り組む。そして自分のプレーをすることを心がけている。全力疾走を怠らず、時に悪い結果になろうとも、冷静にその状況下での最良の努力がなにかを考え実行に移している。

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 両親が来日する中でなかなかホームランが出なかった6月。それでもレアードはいつも明るく、全力でプレーし、チームメートを鼓舞し続けた。打てないものは仕方がない。今、出来る最善の努力をするだけ。そんな勤勉な男を野球の神様は見てくれていた。家族が帰国する前の最後の観戦となった試合で記録は華麗に達成された。試合後、ホームランボールはレアードから両親の手に渡された。それはまるで自分を律して生きてきた男へのご褒美のような出来事であった。喜ぶ両親と祖父母の姿にレアードはなんともいえない誇らしげな、嬉しそうな表情を見せた。その2日後、家族は最高の思い出を胸にアメリカに帰国した。

父(左)と祖父(右)とのスリーショット ©梶原紀章

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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