日本でも新型コロナウイルス(COVID-19)のオーバーシュート(爆発的患者急増)が現実味を帯びてきました。とくに東京を中心とする首都圏は感染経路不明の新規患者数が増え始め、深刻な状況となっています。

 これから患者が急増すると、新型コロナウイルス感染症による重症患者が次々と医療機関に搬送されて、本格的な医療崩壊を起す恐れがあります。そんな緊迫した状況の中、医療崩壊を心配する有志の医師3人が、「COVID-19対策への緊急提言」を4月4日に公開しました。

600人以上の医師の賛同を得た提言

 3人の提言の要点は次の通りです。

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(1)PCR検査の適応を一般の医療機関の医師に判断させる。

 

(2)休校中の公立学校校庭などをテストサイト(検査場所)とするか、または医師会指定の輪番医療施設などを利用して、PCR検査を実施する。

 

(3)軽症者の感染症指定医療機関への無断受診は原則禁止として、地域の医師会が指定する輪番医療施設に受診するか、オンライン診療を提供する。医師によるPCR検査や抗体検査の適応指示もオンラインや電話診療等で可能とする。

 

(4)ホテルや選手村などを改造して医療管理可能な施設とし、指定医療機関に入院中の軽症者をそこに移す。

 

(5)PPE(マスク、ゴーグル、ガウンなどの感染防護具)を迅速大量生産する。

 この提言はフェイスブック上で公開され、現在までに600人以上の医師の賛同を得ているそうです。緊急提言を行った理由を、有志の一人で、総合診療医である徳田安春医師(群星沖縄臨床研修センター⻑)にうかがいました。

緊急事態宣言を行った安倍首相 ©AFLO

陽性者の5人に4人が“無症状”だった

──どうして、このような提言を出すに至ったのですか?

徳田 現在、日本では厚労省による「クラスター対策」と「三密」の自粛の呼びかけが行われています。SARS(急性呼吸器症候群)など、ほぼ全例の感染者が明らかな症状を起こす疾患では、過去にさかのぼる接触者追跡ができるので、クラスター対策が有効です。

 しかし、有力な医学誌「BMJ(イギリス医師会雑誌)」の4月2日の報告によると、先週、中国で行われた新型コロナウイルス検査で陽性と確認された166人のうち、実に5人に4人にあたる78%(130件)が、明確な症状を示さなかったというのです。

 乗船者の平均年齢が高いダイヤモンド・プリンセンス号の感染データでも、51%もの無症状者がいました。無症状者は感染者の2分の1から5分の4を占めると考えられるようになっています。無症状者を含めると、軽症者を含めた全症状者の最低約2倍は感染者がいることになります。

 しかも、その無症状者からも他の人々に感染させる可能性が示唆されてきています。このような潜伏性により全国に散布されて、あちこちでクラスターが発生する状況では、一定のクラスターが見逃されてそこから広がる恐れがあるのです。