戦時下の厳しい状況のなかで野球を愛したS少年の日記
2017年、北海道博物館で「プレイボール!北海道と野球をめぐる物語」という展示会があったのですが、これが実に楽しめました。北海道開拓時代の「お雇い外国人」たちが伝えてくれた野球が北の大地に徐々に根付き、たくぎん・大昭和製紙北海道などのかつての社会人野球から駒苫ほかの北海道の高校野球、そして北海道日本ハムファイターズなどの様々な形で芽吹き、花開いていった様を貴重な資料で紹介してくれる企画展で、文字通り北海道の野球の歴史を紐解くようなものでした。
そんな展示のひとつ「函館の野球少年の日記」(函館商業高等学校「学徒日記」より)。1939年に高校に入学したS少年、子供の頃から野球をしたり見たりするのが好きな子だったようで、戦時下の厳しい状況のなかでも折につけ野球への思いを日記にしたためていたようです。在学中は体調を崩し病気療養で休学もしていて外出もなかなか出来なかったようですが、そんな合間に早慶戦の放送に耳を澄ませて一喜一憂したり、親兄弟に反対されながらも目を盗んで野球をして怒られたり、遠征してきた巨人の試合を見に行って興奮のあまり長文書いたり。
戦争中というS少年の生きた頃といまの僕らを単純に比較することは出来ないだろうけれど、野球を見に行けないもどかしさ、寂しさ、だからこそ普段より感じられる野球への気持ちの高まりや野球への愛。当時から約80年の時間の隔たりはあれど、野球好きにとってとても共感出来るものでしたし、センバツ中止やプロ野球開幕がいつになるのかわからない現在の状況などを思えばさらに身近なものとして感じられる気がします。
S少年の日記の一部より。
昭和16年5月19日 ※病気療養で休学中 「早く野球がやれるようになれば善いがなぁ!」
本当に早くそういう日が来ることを祈っていますし、そのときにはS少年のように興奮冷めやらぬ感じに長文で試合の評を書いちゃったりしたいなぁ、などと思っています。
そんなことを書いているさなか、
※参考文献:北海道博物館第3回特別展「プレイボール!北海道と野球をめぐる物語」ガイドブック(図録)
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