カープが苦しい戦いを続けている。決して強くはない。じゃあ最下位に陥落するほど弱いかというとそうでもない。勝率を五割に戻しても、そこから「もうひと伸び」ができない。気づけば借金が増え、下位の順位に甘んじる。5月5日までは雨天ノーゲームや引き分けを挟んで魔の6連敗。チームにとってもファンにとっても煮え切らない日々が続くばかりだ。

 カープが「もうひと伸び」するために必要な要素は一体なんだろう。それはやはり「打線」だろう。では、打線のどこが、いや、打線の誰が機能すればいいのか。個人的に思い浮かぶのは、田中広輔、クロン、このふたりである。

田中広輔

将来性がある羽月の躍動を願っていればいいのだろうか?

 今シーズンから河田さんがコーチとして復帰、今回は監督を支えるヘッドコーチとして戻ってきたのだが、その河田さんはカープ復帰が決まった直後からずっと「タナ・キクの再機能」が最重要課題であると言ってきた。昨シーズンまではヤクルトのコーチ。つまり対戦相手という視点でカープを見ていたのだが、河田さんは打者の「つなぎ」の意識の甘さを感じていたという。広輔や菊池がそのあたりをちゃんとこなせていたか、明確に分かってやっていたかというと疑問だと。そしてカープはやはり「タナ・キク」がチーム打撃や自己犠牲の姿を率先して見せていくべきだと。

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 そんな河田さんの分析、そして河田さん自身のカープ復帰によって、今シーズンは「タナ・キク」が華麗に復活する。私はそう信じていた。しかし、いざ開幕してみると、開幕戦からヒットを量産する菊池に対し、とにかく広輔が振るわない。昨シーズン、あるいはその前のシーズンでイヤというほど見てきた「打てない広輔」がそこにいたのだ。やがて打順は下がり、気づけばスタメンからも外れる日が増え、気づけば1番・菊池、2番・羽月。いわゆる「キク・ハツ」が前半戦のコンビネーションとなっていた。

 しかし。25年ぶりの優勝からの3連覇を見てきた私としては、どこか心に引っかかるものがある。あの3連覇でチームの中心、機動力の中心、守備の中心にいたのは他ならぬタナ・キク。強かったカープの象徴の中には、紛れもなく田中広輔の名があったのだ。だからこそ、このまま落ちていってほしくない、戦力から外れてほしくない。この感覚は、もしかして単なる「未練」なのだろうか? タナ・キクがダメでキク・ハツが機能するなら、それはそれで構わない。チームが勝ちを増やし、順位を上げていくならそれでいい。さっさと広輔に見切りをつけ、年齢的にも将来性がある羽月の躍動を願っていればいいのだろうか?

 チームという目線で見れば、機能すればどちらのコンビでも構わない。若鯉の羽月が活躍することに、なんの問題もない。しかし。しかし私は、もう一度、光り輝く広輔が見たいのだ。羽月を含む若手に引導を渡されるにはまだ早い。広輔よ、這い上がれ。多くのファンもそれを望んでいるはず。キク・ハツとタナ・キク。うわあ。どっちも捨てがたい。私はそうやって嬉しい悲鳴をあげ、頭を抱えたいのだ。