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「人生で大事なのは成功体験ばかりではない」

 上野は「若い時にしか失敗は出来ない。だから失敗をしまくればいい。年を重ねてからは、なかなかそうはいかないから。若いうちの特権。失敗を重ねて、どうして失敗をしたか、どうすれば成功をするのかを考えて、自分を作っていけばいい」と熱く語ってくれた。それは大抵、自主トレメニューが終了して夕食の時間が終わり、フォーム解析のために映像を見ている時だった。みんなでフォームに関して意見を交わす。上野は映像を見ながら技術論だけではなく大切な心構えを教えてくれた。若手選手たちにとっては幸せなひとときだった。超一流アスリートから直接、貴重な話を色々と聞けたことが財産だ。

「人生で大事なのは成功体験ばかりではない。悔しさや辛い思いが、いい事に繋がっているのだとつくづく思いましたし、今の自分にはその心がけが大事だと思います」と種市。

 種市は昨年9月に右ひじを手術。現在は復帰に向けてリハビリに励んでいる。テレビの向こうで躍動する上野の姿は地道な日々に気持ちが沈みがちの種市の心に響いた。種市は言う。

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「復帰を目指してさらに頑張ろうという気持ちにさせていただきました。そしてまた自分がマウンドに戻った時に上野さんのように見ている人に感動をしてもらえるようなピッチングをしたいと改めて思いました。どの競技を見ていても勇気をもらう。こうやってテレビ観戦をしているとスポーツの力を改めて感じることが出来ました。ボクも野球選手として怪我から復帰して頑張る姿を見せたい。怪我をしている人の励みになるような投球がしたいと思っています」と種市。

 地道なリハビリの日々は続く。現在は外でのキャッチボールを再開。少しずつ距離を伸ばし、強度をあげながら、一歩ずつ前に進んでいる真っ只中だ。リハビリは単調な毎日でもある。周りがブルペンで全力投球をしている中で投げられない我慢の日々は続く。滅入りそうになることは人間だからもちろんある。でも今は昔の自分のように決して弱音は吐かない。この我慢の日々が未来の栄光へと繋がっていると信じることができる。

 人生で大事なのは成功体験ばかりではない。この悔しさや辛い思いこそがエネルギーとなり、幸せに繋がっている。オリンピック・女子ソフトボール決勝戦を見ながら種市は日本に金メダルをもたらした偉大なアスリートからもらったアドバイスを何度も反芻した。背番号「16」は完全復活の日を夢見る。自分がオリンピックから勇気をもらったように、復活後の投球で人に勇気を与えたいという尊い想いを馳せる。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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