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髙橋光成が羨ましい!

 前のコラムでも書いたが、2012年4月26日のソフトバンク戦で「奇跡のグランドスラム」と言われた僕の逆転満塁ホームランは、クリから譲ってもらったバットで打たせてもらった。

 じつは、このときに譲ってもらったバットは1本ではない。3本ほど譲ってもらった。

米野「クリ、お願いがあるんだけど」
クリ「どうしたんですか?」
米野「クリのバット、使ってみたいんだけど、いい?」
クリ「はい、全然いいですよ。今ちょうどバットの本数に余裕があるので、3本くらいどうぞ!」
米野「えっ! いいの、3本も?」
クリ「はい、もちろん。これでかっ飛ばしてください!」
米野「おー! まじ、ありがとう!!」

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 そして、僕のライオンズでの全てと言ってもいい、あのホームランが生まれた。

 もし自分のバットで打っていたら、違う結果になっていただろう。プロ野球は、それくらい少しの違いで結果が大きく変わる世界だ。

 きっとクリはこういう心遣いをしてくれたのだろう。

――1本しかないと、もし練習で折れてしまったら試合で使えなくなってしまう。それでは思い切りスイングできないし、調子を崩したらよくない――

 なんて顔も心も男前なんだ!

 ロッカーが隣だった頃もあって、技術的なことを質問させてもらったときにも快く答えてくれた。後輩だけでなく先輩からも信頼され、2012年から2016年までキャプテンとしてチームを言葉と背中で引っ張ってくれた!

 周りには見せないが、チームの負けが込んでいるときにはキャプテンとして責任を感じていたと思う。試合でのプレー中はもちろん、ベンチにいるときにも声を出し、チームの士気を上げるために先頭に立って鼓舞していた。

 今シーズン、試合中に出番を終えて途中交代したクリが、その日の先発投手でベンチに退いた髙橋光成と会話している姿をテレビでたまたま見たことがある。二人がとても柔らかく優しい表情で話している光景を見て、いいチームだなぁと思った。僕も会話に入りたい! 光成が羨ましい! そう思ってしまったのが正直な気持ちだ(笑)。

登場曲と重なる男・栗山巧

 そんなクリも、9月3日に38歳になる。出会った頃から20年近くが経ち、やんちゃな雰囲気の若手俳優からベテラン俳優のような色気が出てきた。

 栗山巧。

 熟練した技術、名前通りの巧みなバットコントロール。

 プロとして大事な、気持ちのコントロールにも優れている。打っても打たなくても、すぐに切り替えて次のプレーに集中するのは思っているより難しいものだ。

 背番号1、栗山巧が打席に入るときに流れる曲、クレイジーケンバンドの「あ、やるときゃやらなきゃダメなのよ。」の歌詞を改めて記したい。

「やればできるよ できるよやれば やるしかないんだから やらなきゃダメなのよ」

 この思いで野球をやり続けてきたクリだから、見えてきた大台。

 ライオンズ史上初の生え抜き選手での2000本安打にラストスパート!

 できればその瞬間を、メットライフドームのライトスタンド後方から見てみたい。

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