東京都中央区晴海2丁目。この約10年の人口が14.6倍にも増えた地区だ。

「以前は東京都下水道局のポンプ所しかなかったような埋立地です。そこに48階建て以上のマンションがボンボンボンと三つも建ったんだから、人口は増えるわよ」と69歳の女性が解説する。女性はそのうちの1棟の住民である。

 中央区内では、東京湾や隅田川、運河などのウオーターフロントに建つ高層マンション群が増えている。こうした開発が原動力となり、全国で最も人口が増加する自治体になった。

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 2020年10月に行われた国勢調査で、5年間の人口増加率が19.9%となり、実質的な全国1位となったのだ。(全3回の2回目/#1から続く

コロナ禍でも人口増加が止まらない中央区

「実質的」としたのは、数字だけだと福島県内の4町村の方が高いからだ。

 3117.0%、2238.9%などという伸びになっている。だが、この4町村はいずれも東京電力福島第1原発の事故(2011年)による避難で、一時は住民が消えるか、消えるに等しい状態となった自治体だ。少しでも住民が戻ると人口増加率としては高くなるものの、実際には帰還者の少なさが問題になっている。

東京都下水道局のポンプ所の横に建つ3棟の高層マンション(中央から右の三つ、晴海2丁目) ©葉上太郎

 つまり、本当の意味での全国1位は中央区だった。しかも、2割近くの増加という驚くべき状態だった。

 他にも実質的な3位が千代田区、同9~11位が文京区、品川区、渋谷区、同21位が港区、同24位が台東区と、東京23区がズラリと並ぶ。

 中央区は新型コロナウイルスの拡大後も人口が増えており、区役所の試算では今後の10年で1.25倍になる見込みだ。

10年強で人口が「488人→7148人」になった町

 いったい、何が起きているのか。

 それを調べるため、中央区にある98の「町丁目」ごとに、どれだけ人口増減があったかを分析してみた(#3のランキング表を参照)。5年ごとの国勢調査より少し長い期間で動向を見るため、前々回の国勢調査が行われた2010年10月1日から今年7月1日までの10年強の数字を拾った。その結果、この10年強の比較で最も伸びが激しかったのが、冒頭の女性が住む晴海2丁目だった。実に488人が7148人に増えていた。