「私は『近鉄』バファローズファンです」
ただ、その年から僕は大阪近鉄バファローズの事が気になるようになりました。
僕が落語家になった2002年、その同じ年に近鉄戦士になった坂口智隆。
「あの神戸国際からプロ野球選手になったんや。しかも近鉄のドラ1やし」
しかし、その近鉄はわずか2年後になくなってしまいます。
新球団・楽天に行く選手。
オリックスに行く選手。
バラバラになったのは近鉄の選手だけではありません。
近鉄ファンもバラバラになりました。
僕の周りでも「私は『近鉄』バファローズファンです」と言う人がいまだに沢山います。
近鉄が気になる球団になっていた僕ですら、当時オリックスを応援する気持ちにはなれなかったですもん。
全ての近鉄ファンの行き場のない心を繋ぎ止めてくれた坂口
そんな全ての近鉄ファンの行き場のない心を繋ぎ止めてくれたのが、他ならぬ坂口智隆でした。
当時の応援歌にそのファンの想いがこめられています。
【素早く力強く 先陣を切れ 激闘の中で紅く炎(も)やせ 武士(もののふ)の心】
彼が「紅い心」を忘れる事なく新生オリックスで活躍した事によって、オリックスファンに愛されたのはもちろん、近鉄ファンからオリックスファンになれた人が沢山いると思うんです。
自身初の日本シリーズでいぶし銀のヒット
今季こそケガで25試合の出場に留まりましたが、2016年シーズンからここまでのスワローズでの活躍。
スワローズファンにも完全に愛される存在となった坂口智隆。
今季、ケガを乗り越えて迎えた自身初の日本シリーズ。
古巣オリックスと慣れ親しんだ京セラドームで、全国の近鉄ファンに届けた第2打席のいぶし銀の左前打。
坂口智隆にしか打てないあの左前打。
あの逆方向への意識が8回の青木宣親の執念のタイムリーを生み、9回のオスナの逆方向へのタイムリーを生んだ。
坂口智隆にしかできないこと
しかし、他の誰でもない、坂口智隆にしかできないこと。
それは、【近鉄を吸収したオリックスを破り日本一になる近鉄戦士】。
東京で決めてほしいのが本音ですが、この頂上決戦、第6・7戦までもつれる気がしています。
決戦は神戸。そこで繋がれるもの
その試合が行われるのが、元・オリックスブルーウェーブの本拠地であり、我らが坂口智隆の野球の故郷である、神戸。
そう、決戦は神戸。
これは坂口智隆という紅い宿命を背負った男が新たな歴史を刻む日になる。
その全てが繋がった時、我々スワローズファンだけではなく、全国の近鉄ファン、そしてあの球団合併の激動の時代を知る全ての野球ファンにも新たな歴史が刻まれ、その累々たる想いに終止符が打たれる事でしょう。
【不屈の魂で 再び挑み
新たな歴史を刻め 魅せろ坂口】
かっとばせー、坂口!!
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