元日ハム投手に「NPBに絶対に行ける」と太鼓判を押され
そして尊敬する大先輩がコーチとして帯同する今年のBCリーグ選抜戦で、岩田は躍動した。プレーオフ終了直後の9月23日、ジャイアンツ球場での巨人三軍戦vsBCリーグ選抜戦。そこは12球団から39人もの編成・スカウトが集結するショーケースの場だった。
「人生初」という4番で先発出場した岩田は、第一打席からレフト前へ先制タイムリー。さらに盗塁と持ち味を発揮した。内野安打も見せ、3打数3安打1打点2盗塁とその日随一の活躍をスカウトに印象づけたのだ。
乾コーチからも「絶対NPBに行ける」と太鼓判を押され「すごく自信になりました」と振り返る。
ヤクルト原樹理との縁
やはり東洋大姫路高の先輩であるヤクルト原樹理投手は、岩田とは4学年違うため、面識はない。ただ、自分が高校在学中、当時大学生の原が野球部に指導をしに来てくれたことがあったという。
「向こうは絶対僕のことは知らないと思います。でもすごく嬉しいし、心強いですね。(直接の先輩である)甲斐野央さん(ソフトバンク)に連絡した時には、甲斐野さんから『樹理さんに連絡しておくから』と言ってもらいました。後輩が行くからって」
ヤクルトには赤羽由紘、松井聖という信濃グランセローズで昨年一緒にプレイした選手もいる。背番号も松井:022、赤羽:023、岩田:024と並びになった。
「一緒にやれて嬉しいという気持ちはありますが、外野の本職として負けるわけにはいきません」
中山翔太・濱田太貴らと外野のポジションを争う
今季のイースタンでは外野を守ることも多かった両選手だ。チーム内でポジションを争う外野手には右打ちが多く、足の速い並木秀尊、スラッガーの中山翔太・濱田太貴らがいる。
左の外野手は少ないものの、ドラフト2位で明治大から丸山和郁が指名を受けた。俊足巧打と、岩田とは同じタイプの外野手だ。大卒で上位指名なら、順当にいけば一軍キャンプ行きだろう。当面は仮想ライバルになってきそうだ。
ポジション、そして代走・守備固め・代打としてどれだけ自分の力を伸ばし、戦力になれるか。BCリーグで成長してきたバッティングはもちろん、一番の売りである足も、実はまだまだ発展途上だ。
トレーナーからは「走り方が汚い」
「僕はトレーナー目線だと、走り方が汚いというか、無駄がある走り方らしいです。もっと速くなる走り方をして、足を強くします」
BCリーガーからNPBドラフト指名を受けるのは、ほんの数名の狭き門。実力だけではなく、運やタイミングが必要だ。スカウトの目の前で結果を出すこと。そしてただ打つ、走るだけではなく、その伸びしろを示すこと。
そうしてNPBに入団しても、毎年多くの独立リーグ出身選手が戦力外通告を受ける。それはヤクルトも例外ではない。事実、今季はBC石川出身、5年目の大村孟が戦力外となった。
「結果を出せなければクビになるのは当然のこと」
岩田は「結果を出せなければクビになるのは当然のこと」と怯まない。
「先のことを気にしても足元を掬われる。監督がいつも言っているんです。『その日のその一打席』を考える。毎試合毎試合。僕もそういうタイプです。その一日に集中して、それで結果が出ればいい」
信濃自慢のスピードスターが、運と縁とを味方にして、夢見た場所へと駆け上がる。ここからが本当のスタートだ。
「多くの人に応援され、長く愛される選手になりたいです」
快足、シュアな打撃、独特のルーティン。ファンに覚えられるのに時間はかからないだろう。
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