ラジオの実況中継の中で「やんちゃ」という表現を使うことがあります。

「○○選手はやんちゃなところがありますからね」といった具合に。意味をデジタル大辞泉で調べると、

1 子供がだだをこねたりいたずらしたりすること。
2 俗に、若者の素行がよくないこと。不良青少年であること。

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 とありますから、厳密に言うとこれをプロ野球選手に当てはめるのは間違っているかもしれません。

 ただ私の場合は、この言葉を悪口ではなく、1の意味を大人バージョンとして、茶目っ気を持った意味で使っています。

まさに肩で風を切るやんちゃ軍団だったロッテ選手たち

 前置きが長くなりましたが、私がスポーツアナウンサーになりたての80年代後半、ロッテオリオンズの選手はそれこそみんなやんちゃでした。当時流行りのパンチパーマはロッテに限ったことではありませんでしたが、ある時期からアメ車がチームで大ブームになったことがありました。トランザムやらシボレーやらが轟音を立てて川崎球場の駐車場を出入りする。私は愛甲猛さんのシボレー コルベットの助手席に乗らせていただいたことがあるのですが、「頼むからあんまりふかさないでよ」と思いながら、水平に近い、リュージュみたいなシートで固まっていました。

筆者・松本秀夫

 とある選手には、いたずらで私の飲みかけの缶コーラにタバコの吸い殻を入れられました。吹き出す私を見て、手を叩いて笑ってたんだから、これはもう“やんちゃ”を超えた酷い話で、今は絶対許されません。

 そして彼らを束ねていた監督が、亡き金田正一さん。実にさまざまなエピソードをお持ちの方です。ある時、めった打ちされた伊良部秀輝投手(故人)がベンチに帰ってくるや、「明日から浦和へ行け!」と、その場で二軍降格を命じた金田監督ですが、翌日の試合でリリーフに「ピッチャー伊良部!」と告げた時には、ベンチのほぼ全員が笑いをこらえるのに必死だったそうです。これもやんちゃ……とはちょっと違うかな(笑)。

 そんなロッテが1992年千葉に本拠地を移し、ボビー・バレンタイン監督の指揮を仰ぐようになったのをきっかけに少しずつ洗練(?)されてきて、同時に若手が力をつけてくると、違う意味の“やんちゃ”さが頭をもたげてきました。そして西岡剛、里崎智也ら、怖いもの知らずの若者たちが野球界を席巻したピークが2005年。若手だけでなく小宮山悟、初芝清、堀幸一といった個性派ベテランも健在でしたから役者が揃っていました。ご存じの通りプレーオフでソフトバンクを下して、そのまま日本シリーズは阪神を4タテ。

2005年日本シリーズ優勝のロッテ ©時事通信社

 ちなみに、スポーツアナ生活35年、1000試合以上の実況の中で、私の代名詞のようになってしまっているのが、この年のプレーオフの優勝実況。

 堀選手や初芝選手ら、若い頃からともに飲み明かしていたメンバーがマウンドで抱き合って涙を流している姿を見たら込み上げてきて……。

「おべでとう、ちばっどってまでぃーんじゅ(涙)」

 それはもう実況と言えるようなシロモノではありませんでした。もちろん試合後は朝まで飲みました。私もあの頃はやんちゃでしたから!

 そしてまた、交流戦も初年度の2005年、翌年の2006年とロッテは連覇。特に対巨人はこの2年間で11勝1敗と圧勝でした。人気球団にも臆することなく、当時のロッテ選手たちはまさに肩で風を切るやんちゃ軍団だったと思います。