「下町スワローズ」とピンチのチームを鼓舞した’16年の坂口智隆
思い返せば2016年シーズン――前年のリーグ優勝の立役者、畠山和洋、川端慎吾、雄平、山田哲人らを故障で欠き、試合に臨んでいた満身創痍のスワローズを救ってくれた男が、オリックスから移籍1年目の坂口智隆でした。そのとき坂口が言い出したのが「下町スワローズ」というキャッチフレーズ。「『東京』と名乗れるほどの花形はいない。今こそ『下町スワローズ』だ」と残った選手を「底力をみせようぜ!」と鼓舞した男です。
先日、公式アプリ用に「坂口智隆選手誕生日動画」と題して、毎年恒例となりつつある「バースデー動画」をクラブハウスに撮りにいきました。38歳となった照れ屋の坂口は「そっとしておいてくださいよ……」とか言いつつ、6月上旬まで過ごした2軍でどんな準備をしていたかなど真剣な話をしてくれました。
「やる野球は変わらない。とにかく躍動することだけ」
坂口は「若い子に刺激を受けることも当然あったし、逆に自分の姿を見てもらうことで何かを感じてもらえるように意識しながら取り組んでいた。ただやる野球は変わらない。2軍でも1軍でもとにかく躍動することだけは忘れずにいた」と静かに語ってくれました。
日本シリーズには間に合いましたが、去年はケガでリーグ戦25試合の出場に留まった坂口。現在のチームの状態で「優勝」の二文字を使うのは時期尚早な気がしますが、去年、キャリア初のリーグ優勝・日本一を経験したけれど、ほどんど貢献できなかったと本人は感じているはずです。
昨年はケガで優勝に貢献できなかった「裏切り」をバネに
インタビュー中彼に「今年は期待してるからね!」と期待の言葉をかけても「裏切り続けて何年やろうなぁ~」なんておどける彼の口調の端々には悔しさが滲んでいます。僕がその立場なら、たとえキャリア初だとしてもチームの輪の中にいない優勝なんて心の底から喜べないと思います。
今後、坂口が何年現役でプレーするかわからないけど、今年は確実に勝利に貢献していると言えるシーズンになるはずです。1500本以上の安打を打っている男の経験は何物にも代えられない。彼の背中をみてきた後輩が、この窮地に目の色を変えて試合に臨んでくれるはずです。本人の言う「裏切り」を倍にして返してほしい。そして、シーズン後には満面の笑顔でビールかけをする坂口智隆を目に焼き付けたいと思います。
最後に、ファンのみなさんも健康にご留意ください。「絶対大丈夫!」この言葉を胸に一緒に戦いましょう。応燕よろしくおねがいします!
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