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 涙を流す選手・スタッフも多くいた。駆け付けたファンも超満員。私はタマスタ筑後開業当時から取材をしてきたが、おそらく過去一の盛り上がりだったのではないだろうか。また、チケットが取れなかったけれど熱男を一目でも見たいと集まったファンのために、球団は球場外にモニターを用意し、パブリックビューイングも行った。スカパーはこの試合を緊急で無料生放送した。熱男がホークスにとってどれほどかけがえのない存在だったかがうかがい知れる出来事がたくさんあった。

 そして、熱男自身もその思いに応えるように、セレモニーでマイクを持ち、「熱男」を披露し、ファンに丁寧に手を振った。極めつけだったのが、セレモニーを終えた後だった。球場に入りきれなかったファンのために、球場のコンコースから外に顔を出すと、拡声器を持って感謝の思いを再度語った。

 最後はみんなで「熱男~」と大合唱。

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 次の選挙で熱男党があったら是非投票したいと思った。

熱男サプライズ登場にファンも大興奮 ©上杉あずさ

ホークス最後の日に語った“熱男の後継者”

 そして、後輩たちは共に過ごした熱男との3週間を経て、改めてその偉大さを感じていた。本当に松田選手のことを慕い、大好きなのが伝わってきた。そんな後輩たちに、松田選手はホークス最後の日の朝、“熱男の後継者”について思いを語った。

「熱男の後継者は個人を特定せずに、明日からやろうと思った人がやってくれたら嬉しい」

 松田選手自身、2011年オフに川崎宗則選手がメジャー移籍する際、「お前に任せた」とチームのムードメーカーのバトンを渡された。それから11年間、ムードメーカーとして一生懸命元気を出し、「熱男」との出会いを経て、大きな存在へと進化し続けた。若鷹たちと共に過ごす中で、次は誰に託すか考えたそうだが、「勝つためには元気を出したり、盛り上げるっていうことが大事ということに気付いた方が受け継いでくれたら、自分は幸せだと思います」と各々のこれからに期待し、敢えて名指しはしなかった。

 入団時から「熱男」に憧れ、「増男」として必死に背中を追いかけてきた増田珠選手は、共に過ごした最後の3週間で、改めて強い思いを抱いていた。

「ムードメーカーはチームに必要だと思うので、苦しい時もしっかりとそういう立ち振る舞いだったり、声の出し方とか、チームを盛り上げられる選手になっていかないといけない」(増田選手)

 松田選手のホークスラスト“マッチ”は、延長戦の末、3-2で逆転負けを喫したのだが、増田選手はネクストバッターズサークルで終戦を迎えた。ゲームセットの瞬間、増田選手はしばらく呆然と立ち尽くしていた。「自分が何とかしてチームを勝たせるんだ」「大好きな松田選手と戦える最後の試合を何とか勝利で締めくくりたいんだ」。そんな思いがその背中ににじみ出ているように感じた。でも、そんな気持ちこそ「熱男」への大きな一歩なのではないか。近くで熱男魂を吸収した増田選手も、きっと「熱男」の後継者候補の一人として更に奮起してくれることだろう。

 松田選手の思いは確実に後輩たちに届いていると感じた。間違いなく、熱男魂は受け継がれていくはずだ。

 まだまだここに書ききれないほど、たくさんの伝統、“熱男魂”を残してくれた松田選手。心の底からありがとうと伝えたい。ありがとう、松田選手。ありがとう、熱男。またいつか……。

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