実況やOBを絶句させる観察眼

「お兄ちゃんが愚痴を言ったり、マイナスなことを言ったことは聞いたことがないんです。いつも自分のペースで、どんな時も変わらない。辛い時や苦しい時もあると思うんですが、表に出したり、言葉に出したりすることは一度もありません」

 こう語るのはオリックスの左のエース宮城大弥投手の妹・宮城弥生さん。その弥生さんと野球中継でお仕事をご一緒させて頂きました。放送中、宮城家のエピソードを柔和な表情でつぶさに教えてくれました。

宮城大弥 ©時事通信社

 実況のわたくしが「お兄さんの状態のバロメーターはどこで判断していますか?」と伺うと、

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「そうですね、兄の調子の良さ、悪さを見る時はテイクバックの時の腕の位置、手首の位置ですかね。左脇と左腕の空き具合を見ています。あとはスライダーを中心に主審の方との相性も重要です」

 と、さらっと答えて下さいました。

「恐ろしき17歳……」

 わたくし、心の中でつぶやきました。隣にいたオリックスOB、同じくサウスポーだった海田智行さんも放送席の天を仰いで絶句。

 オリックスファンの皆さん、物凄い逸材がグランド外にもいましたよ。宮城弥生という未来のプロ野球リポーターがここにいましたよ。

「兄の表情とかしぐさをみてますね」と返ってくると思っていたわたくし。ところがどっこい、ピッチングフォームのテイクバックを見ているなんて……恐ろしや。宮城投手独特の左腕の使い方の特徴や癖を生まれた時から見て来た妹さん。そして右バッターに対するクロスファイアーを投じる際にインコースをとってもらえるかどうかの審判さんとの相性まで見ているなんて……流石でございます。

 宮城家の家訓は、「挨拶をする。時間を守る。嘘をつかない」この三つとのこと。

 確かに弥生さんは現場の入りは早いし、お兄さんは状態が良い時も悪い時も常にきっちりと挨拶をしてくれる。そして、インタビューでは自分の実現可能なことだけを嘘偽りなく屈託なくきっちりと話してくれる。ほんまに家訓通りに生きている兄弟や……宮城家の教育本があれば読みたいとオンエア中に思いました。

宮城弥生さんと筆者