その一言が、日常を一変させた。排外的な空気が強まる日本で、静かに暮らしていたクルド人親子が直面した“恐怖の現実”。子どもたちに向けられる悪意は、どこから生まれたのか。現場の証言で迫る。ジャーナリスト・池尾伸一の新刊『仮放免の子どもたち 「日本人ファースト」の標的』(講談社)より、一部を抜粋・編集してお届けする。(全2回の1回目/続きを読む

写真はイメージ ©getty

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狙われたクルド人

 国会で強制送還を強化する入管難民法の改正が論議され、成立した2023年6月前後から日本に住むトルコなどの少数民族クルド人へのヘイトスピーチ(憎悪表現)が始まった。

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 クルド人が集中する埼玉県川口市の路上で「根絶せよ!! クルド犯罪と偽装難民」などのプラカードを掲げ、「テロリストを日本からたたき出せ」などと連呼するデモ行進や街宣が続いたほか、X(旧ツイッター)などのSNSでもクルド人を誹謗する書き込みが増えた。

 当初は、民間の団体や、市民や保守的な新聞、一部ジャーナリストによるものだったが、2025年になると、「市民の不安が高まっている」として、政治家や政府もクルド人を標的に定めた。法務省は5月に「不法滞在者ゼロプラン」として、24年に249件だった国費による送還を27年に500件に倍増するプランを発表した。

 その根拠として「ルールを守らない外国人に係る報道がなされるなど国民の間で不安が高まっている」と強調した。ネットでの書き込みの攻撃が集中するクルド人を主要な標的に想定しているのは明らかだった。