英雄には伝説がある。人々はその伝説を追い続ける。そしてそこにはロマンがある。言動を追いかけ、その歴史をひもとき、英雄の実像に近づきたい——それがファン心理というものである。
音楽界の英雄マイケル・ジャクソン。その代名詞・ムーンウォークにまつわる、さまざまな起源説にも、歴史とロマンが満ちあふれている。
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名もなき黒人の子どもたちの遊びから生まれた?
ムーンウォークが初めて世に披露されたのは、1983年にNBCで放送されたモータウン25周年特番『Motown25:Yesterday,Today,Forever』でのこと。「ビリー・ジーン」の間奏で見せたステップだった。 放送されるや、翌日から街じゅうの若者がマネを始めたと言われている。それほどまでにセンセーショナルだったのである。
マイケルは自伝『ムーンウォーク マイケル・ジャクソン自伝』(田中康夫:訳/河出書房新社)で、このように述べている。
《ムーンウォークはブレークダンスのステップとして、黒人の子供たちがゲットーの街角で作り出したポッピングというタイプのステップから生まれたものです。(中略)ムーンウォークを僕に教えてくれたのは三人の子供たちでした。彼らから、その基本を授かると、ひとりで何度も何度も繰り返し練習しました。(中略)ダンサーとして、黒人は本当に革新的です》
名もなき黒人の子どもたちの遊びから生まれたというエピソードは、子ども好きで、黒人としての誇りを持ち続けたマイケルらしい発言である。
が、そこは幼少期から多種多様な文化を自身のパフォーマンスに取り入れてきた、勉強熱心なマイケルのことだから、さまざまな発想源があったはず……。ファンや評論家たちは、さまざまなムーンウォークの発想源、起源を追いかけることになるわけだ。






